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2016 年度 実施状況報告書

急性腎傷害に伴う骨ミネラル代謝異常の病態解明

研究課題

研究課題/領域番号 16K21384
研究機関東海大学

研究代表者

駒場 大峰  東海大学, 医学部, 講師 (60437481)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードFGF23 / 急性腎障害
研究実績の概要

腎臓は生体のミネラルバランスを保つために重要な役割を担っている。このため,慢性腎臓病を有する患者では,二次性副甲状腺機能亢進症に代表される骨ミネラル代謝異常が出現し,生命予後に深刻な影響を及ぼす。近年,この病態にFGF23が深く関与していることが明らかになっている。
FGF23は骨細胞によって産生される液性因子で,近位尿細管におけるリン再吸収を抑制するとともに,腎臓での活性型ビタミンD産生を抑制する。慢性腎臓病の患者では高リン血症を防ぐため,リン利尿作用を有するFGF23分泌が早期の段階から亢進しており,このFGF23の作用により腎臓における活性型ビタミンD産生が抑制され,二次性副甲状腺機能亢進症に至る。
さらに近年,急激な腎機能低下がFGF23の急激な上昇を引き起こすことなどが報告されているが,その病態生理学的意義は未だ明らかではない。慢性腎臓病の場合と同様に,急性腎障害に伴う骨ミネラル代謝異常においてもFGF23が重要な役割を担っている可能性が高いと考えられるが,これまで十分な検討がなされていない。急性腎障害に伴う骨ミネラル代謝異常に関して,急性腎障害から回復に至る過程における連続的な病態を解明することは,急性腎障害の患者管理の観点からも重要な課題であると考えられる。
そこで本研究では,急性腎障害における骨ミネラル代謝の病態,FGF23の役割を解明することを目的にラット腎虚血再灌流障害モデルを用いた検討を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

最初に我々は適切な虚血時間の設定のため,片腎摘出後の腎虚血時間を25分,35分,45分の3条件で検討を行った。その結果,35分の虚血時間が必要十分,かつ可逆性の腎障害,及び骨ミネラル代謝異常を惹起する上で最適の条件であることを確認した。
次いで虚血時間35分の条件下で,腎虚血再灌流障害が骨ミネラル代謝に及ぼす影響を詳細に検討した。腎虚血再灌流障害による腎機能の悪化とともに,高度の高リン血症が出現し,血清FGF23値は著しく上昇した。骨細胞でのFGF23 mRNA発現も上昇しており,骨細胞でのFGF23産生が亢進した結果,血清FGF23値が上昇したものと考えられた。腎虚血再灌流障害の72時間後の評価において,1,25-dihydroxy-vitamin Dの濃度は大きく低下し,これに合致して腎臓におけるCyp27b1 mRNA発現は亢進,Cyp24a1 mRNA発現は低下しており,FGF23作用により活性型ビタミンD産生が抑制されているものと考えられた。リン代謝に関しては,リン分画排泄率(FEP)は大きく上昇する一方,一日リン排泄量に変化がなかったことから,ネフロンあたりのリン排泄亢進により,リン排泄が保たれているものと考えられた。腎臓におけるNapi2a mRNA発現は抑制されており,FGF23に反応したリン排泄の促進が機能的に生じていると考えられた。
上記の結果より,FGF23が急性腎障害に伴う高リン血症に対する防御機構として上昇している可能性が示唆された。

今後の研究の推進方策

上記の結果に基づき,我々は,同じ条件で腎虚血再灌流障害後7日間の経時的変化の検討を開始している。腎虚血再灌流障害の7日後の時点では,急性腎障害からの回復が認められ,この時点において低リン血症が出現することを観察している。急性期に著しく上昇したFGF23が,腎機能の回復とともに低リン血症を引き起こした可能性が考えられた。今後,この状態におけるミネラル代謝をより詳細に検討するとともに,FGF23の役割をより確定的に実証するため,FGF受容体阻害薬(PD173074)を用いて,FGF23の作用を阻害した状況におけるリン代謝の変化を検討する予定としている。

次年度使用額が生じた理由

当該年度に支給された助成金はほぼ全額使用され,試薬の割引等の理由により11,765円が余剰となった。

次年度使用額の使用計画

次年度使用額は小額であり,試薬や備品の購入費用に充てる予定である。

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公開日: 2018-01-16  

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