現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
6週齢のSDラットを用いて,片腎摘出後,35分間の腎虚血再灌流障害(IRI)を行った。IRI後,腎機能の悪化とともに高度の高リン血症が出現したが,その後血清リン値は低下傾向を示し3日後に正常化した。IRIの3日後の時点において,FGF23値は著明な上昇を示し,腎Napi2a mRNA発現抑制,リン分画排泄率(FEP)上昇,腎Cyp27b1 mRNA発現抑制,1,25-dihydroxy-vitamin D値の低下を認めた。IRIの7日後では,腎機能の回復とともにFGF23値は低下し,1,25-dihydroxy-vitamin D値は上昇傾向を示す一方,血清リン値は大きく低下し,高リン血症から低リン血症に転じた。低リン血症にも関わらず,腎Napi2a mRNA発現抑制は遷延しており,FGF23作用の遷延により低リン血症が生じた可能性が考えられた。 次に我々はIRIモデルにFGF受容体阻害薬(PD173074)を投与し,FGF23作用を阻害した状況におけるミネラル代謝の変化を検討した。IRI後,50 mg/kgのPD173074を3日間連続投与したところ,急性腎障害からの回復後も高リン血症が改善せず遷延した。高リン血症の遷延にも関わらず,PD173074投与により腎Napi2a mRNA発現は相対的に亢進しており,FGF23作用の阻害により高リン血症に対する代償機構が破綻したものと考えられた。一方,PD173074投与により急性腎障害後の腎Cyp27b1 mRNA発現は亢進し,1,25-dihydroxy-vitamin D値は上昇した。 以上の結果より,急性腎障害後に著しく上昇するFGF23は,リン利尿を促進することにより高リン血症に対する防御機構として機能する一方,急性腎障害後の1,25-dihydroxy-vitamin D低下の主たる要因であることが明らかとなった。
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