研究課題
以前より筆者らは、マクロライド系抗生剤のオートファジー阻害活性に着目し、その臨床応用を検討してきた。アジスロマイシン(AZM)、クラリスロマイシン(CAM)を頭頸部癌細胞株CAL27、Detroit562に添加したところ、通常培養条件化では細胞毒性がほとんど発現されないにもかかわらず、アミノ酸飢餓培地下では著明な殺細胞効果が発揮されることを予備実験で明らかにした。そこで今年度は、細胞死の誘導機序を追及することを主目的とした。アミノ酸飢餓状態下でCAL27にAZM、CAMを添加すると、アポトーシスと小胞体ストレス性転写因子CHOP (GADD153)の強力な誘導が観察された。CAL27細胞でCHOP knockdownにより細胞死は有意に減弱し、CHOP-/-MEFにおいても野生型CHOP+/+MEFに比べて細胞死が抑制された。オートファジー誘導に必須のatg5をコンディショナルにのノックアウト(KO) できるMEF細胞株、atg5 tet-off m5-7株を用いて、アミノ酸飢餓条件下でatg5 KOしたところ、マクロライド添加と同様にCHOPの誘導と連動して細胞死が増強した。また、これらの系にアミノ酸を再添加することで、細胞死ならびにCHOP誘導は完全にキャンセルされた。以上より、アミノ酸飢餓でマクロライドによりオートファジーを阻害すると、細胞内のアミノ酸プールが枯渇しCHOP誘導を介してアポトーシスをおこすと考えられた。また、これらの系でROS-glo(Promega 社)を用いて酸化ストレスを検証した。アミノ酸飢餓状態で酸化ストレスがややかかるものの、AZM、CAMの添加による増加は見られなかった。また、抗酸化剤であるα-tocophenol、astaxanthinを添加しても細胞死は抑制されず、今回の系への酸化ストレスの関与は乏しいと考えられた。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度の主目標としていた細胞死の機序の解明は概ね検証することができた。しかし、「EGFR シグナルの有無による細胞死の増減」および「アミノ酸トランスポーター阻害剤とAZM、CAM 併用時の抗腫瘍効果の増強」の項目に関しては、まだ検討は十分に行えていない。
平成29年度はin vivoでの検討を計画していたが、まずは平成28年度の未実施課題を遂行する。方策は当初掲げていた計画通りである。その後、in vivoでの検討に推移する。
物品費(消耗品費用)として計上していたものが残金として繰り越された。
次年度(平成29年度)、全額使用する予定である。
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PLOS ONE
巻: - ページ: -
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0164529
Int J Oncol.
巻: 49 ページ: 1848-1858
doi: 10.3892/ijo.2016.3673.
http://www.tokyo-med.ac.jp/target/