研究課題
本研究は,転移・再発乳癌に対してアグリソーム形成を標的とする新規治療法の開発を目的とするものであり,平成28年度は概ね計画通りに遂行できた。転移性乳癌細胞株MDA-MB231細胞にプロテアソーム阻害剤であるボルテゾミブ(BZ)を作用させると,抗ビメンチン抗体で強陽性に染色されるアグリソームが微小管形成中心に形成された。微小管重合阻害剤であるビノレルビン(VNR)または脱重合阻害剤であるパクリタキセル(PTX)をBZと同時に作用させると,このアグリソーム形成が阻害され,小胞体(ER)ストレス負荷を介した殺細胞効果が増強した。興味深いことに,この殺細胞増強効果はVNRの方がPTXよりはるかに強かった。また,BZとVNRとのコンビネーションの優位性は他の転移性乳癌細胞でも再現された。この現象を時系列で詳細に解析するために,1)アグリソーム形成の定量解析法としてEGFP-vimentin安定導入株(MB231-EGFP-vimentin)の樹立を,また,2)ERストレス定量解析法としてMB231-ERAI-venus安定導入株 (ERストレスに応じてXBP1のスプライシングが誘導され蛍光venusが誘導されるシステム)を作成した。この安定導入株とIncuCyte生細胞解析システムも用いることで,アグルソーム形成能ならびにERストレス負荷が経時的に簡便かつ安定して評価可能となった。今後は,各種薬剤によるアグリソーム形成阻害能とERストレス負荷の相関性を検証し,最も効率的な薬剤の組合せの抽出を行い,さらに,乳癌細胞株移植マウスを用いてin vivoの薬理効果を検証する予定である。
2: おおむね順調に進展している
アグリソーム形成およびERストレス負荷の独自の定量解析法が確立したため,今後の研究進展の加速が期待できる。
アグリソーム形成能およびERストレスの定量的生細胞イメージング法がほぼ確立した。今後はこの解析方法を駆使してアグリソーム形成を阻害するための有効な薬剤の組合せを抽出し,動物実験により薬理効果を検証していく。
物品費(消耗費)が少額(6,047円)繰り越された。
次年度で全額使用する予定である。
すべて 2016 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
Int J Oncol.
巻: 49 ページ: 1848-1858
10.3892/ijo.2015.3237
巻: 48 ページ: 45-54
3892/ijo.2015.3237
PLoS One.
巻: - ページ: -
10.1371/journal.pone.0164529.
http://www.tokyo-med.ac.jp/target/