研究課題
平成29年度は前年度の研究実績を基盤として,ほぼ計画通り遂行できたと考える。本研究の主たる目的は,細胞内の二大タンパク質分解系であるユビキチン・プロテアソーム系とオートファジー・リソソーム系の両阻害剤に加えて,アグリソーム形成阻害作用を有する薬剤を組み合わせることで,ERストレス負荷を介した強力な乳癌の細胞死誘導を試みることである。そこで,平成29年度は,ERストレスの定量的モニタリング法を確立することで有効なアグリソーム阻害薬の絞り込みを目指した。転移性乳癌細胞株MDA-MB-231細胞にERAI-Venusベクターを導入することにより、ERストレス関連遺伝子であるXBP1スプライシングシグナルを発現する安定導入株を樹立した。この細胞株を用いて生細胞イメージングシステムIncuCyteによりVenus蛍光強度を測定することで,ERストレスの経時的なモニタリングに成功した。この測定系を用いて,プロテアソーム阻害剤であるボルテゾミブ(BZ)とオートファジー阻害活性を有するマクロライド抗生剤(CAM,AZM)との併用、もしくはBZと微小管形成阻害剤(VNR,PTX)の併用によるERストレス負荷の比較を行った。BZ+CAMおよびBZ+VNRとの併用において高い蛍光強度を示し、強力なERストレス負荷が確認された。このERストレス負荷はMDA-MB-231細胞に対する殺細胞効果と強い相関性を認めた。また,BZ+CAMに,微小管輸送を阻害することでアグリシーム形成を阻害するHDAC6阻害剤であるSAHAを併用することで,ERストレス負荷は一段と増強し,これと連動してさらに強力な殺細胞効果が得られた。以上より,MDA-MB-231-ERAI-Venusアッセイシステムを用いることでERストレス負荷療法に有効なアグリソーム形成を阻害する薬剤選択が可能となった。
2: おおむね順調に進展している
アグリソームの定量解析に加えて,平成29年度はERストレスの独自の定量解析法が確立できた。今後の研究の加速化が期待できる。
平成29年度までは転移性乳癌細胞株を用いたin vitroの検討が中心であった。平成30年度はゼブラフィッシュあるいはマウスを用いた移植実験によりin vivoの薬理効果の検証を進めて行きたい。
すべて 2018 2017 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (15件) 備考 (1件)
Int J Oncol.
巻: 52 ページ: 1165-1177
10.3892/ijo.2018.4282
http://www.tokyo-med.ac.jp/target/