研究課題/領域番号 |
16K21390
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
山本 将仁 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (90733767)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 筋-腱-骨複合体 / 顎顔面領域 / 運動器 / マウス / 発生 |
研究実績の概要 |
顎顔面領域で舌や口腔底部、下顎周囲の腫瘍により下顎骨を切除した症例は、下顎の左右対称性が失われ、機能時にきわめて不安定な運動様相を呈する。現在、切除された下顎骨はチタンプレートと自家骨移植の併用などにより再建手術が行なわれているが、切離した筋と骨の再付着ができず、咀嚼機能障害などの術後合併症に悩む患者が後を絶たない。この問題を解決するため、筋付着部の再生に向けた筋-腱-骨複合体発生・組織構築メカニズムの基礎研究を進める必要がある。運動器とは、筋、骨、軟骨といった主要組織が腱・靭帯で強固に結びつくことによって動力機能を得るもので、これまで筋、腱、骨、軟骨といった組織単体に対する研究は発生・再生の両面から進められてきた。しかし、筋-腱-骨複合体の組織構築発生・分化メカニズムが長い間不明のままであったため、それら複数組織がいかに1つの機能的な組織を作り上げるかという命題に対して、未だ十分な仮説すら提示されてこなかった。 本研究では、骨化様式による筋-腱-骨複合体の組織構築メカニズムの違いを明らかにすることを目的とした。さらに、筋-腱接合部形成細胞の特性の一端を解明することとした。 本研究を遂行することにより、iPS細胞や間葉系幹細胞から分化誘導された筋、軟骨、骨などの単一組織を、強靭に融合させるメカニズムが解明できると考えている。さらに、将来的には分化誘導した単一組織を結合した筋-腱-骨複合体の移植が可能となり、損傷した筋付着部を再建できる新たな治療法の開発につながると信じている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
骨の発生様式における筋-腱-骨の組織構築の違いを明らかにするためには、(1) 膜性骨化により発生する下顎骨と咀嚼筋の付着過程と、(2) 軟骨内骨化により発生する尺骨と上腕三頭筋の付着過程 を比較解析する必要がある。 初年度は、下顎頭と外側翼突筋、下顎骨咬筋粗面と咬筋、尺骨の肘頭と上腕三頭筋のそれぞれの付着領域を胎生期マウスから採取し、形態学的に付着過程を解析した。その際、骨と腱の双方の未分化間葉細胞に発現するSOX9の局在を明らかにすることで、膜性骨特有のenthesis(腱-骨移行部)の発生メカニズムを解析した。また、同時に腱の出現位置を明らかにするために、AZAN染色、Desmin+アルカリフォスファターゼの二重染色(免疫組織化学的染色)、Type II collagen(免疫組織化学的染色)をおこなった。 その結果、胎生13~18日齢のマウスにおける肘頭のenthesisの発生部位にはSOX9が常に発現していた。一方、翼突筋窩のenthesisにおいては、胎生13日まではSOX9の発現を認めたが、その後下顎頭軟骨の急速な上方への発達と下顎頭軟骨周囲に発生する骨襟(膜性骨)の出現により、enthsisへのSOX9の発現が認められなくなった。また、軟骨が発生に全く関与しない咬筋粗面のenthesisはどの時期においてもSOX9は発現しなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は翼突筋窩、咬筋粗面、肘頭のenthsisにおけるType I collagen, Tenascin, Tenomodulinなどの局在をSOX9と共に明らかにし、転写レベルでの検索も追加する予定である。また、形態学的に筋と骨の付着メカニズムの過程を三次元で把握するために、組織連続切片から3D立体構築を行うこととなっている。 筋-腱接合部形成細胞の特性については、形態学的に筋芽細胞と筋管細胞との違いを明らかにするために、共焦点レーザー顕微鏡を用いて1細胞あたりの3次元構造を解析する。また、マイクロダイゼクションで筋-腱接合部形成細胞を分離し、マイクロアレイにて遺伝子の網羅的解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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次年度使用額の使用計画 |
3D立体構築ソフトであるAmiraの納品が遅れ、28年度の研究費に未使用額が生じたが、次年度に納入されるため、今年度行う予定の研究計画と併せて実施する。
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