近年、標高と自殺率には強い正の相関があるとの報告が相次いでおり、標高の高い地域にはうつ病が多いと考えられている。しかしながら、私たちはヒマラヤやアンデスの高地に住む高齢者にはうつ病が少ないということを報告してきた。本研究ではヒマラヤ高地のラダック地方において、宗教観やソーシャルサポート、幸福度、性格特性などがうつ病の発症にどう影響しているのか明らかにするために文化的背景まで踏み込んで調査を行った。過去にうつ病と診断した住民2名のフォローアップ調査からは、ソーシャルサポートや信仰心はうつ病の発症に抑止的に働くだけでなく、うつ病を発症したあとの経過にも良好な影響を与えている可能性が示唆された。
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