研究課題/領域番号 |
16K21399
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
児玉 賢史 東京理科大学, 研究推進機構総合研究院, プロジェクト研究員 (60632552)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 形状認識 / データ圧縮 / 並列演算 / 大規模演算 / 分散コンピューティング |
研究実績の概要 |
3次元における複雑形状認識に関する研究を中心に行った。特に本年度(平成29年度)は、立体上に存在する任意の点が、3次元複雑形状の内部にあるか、または、外部にあるかについて高速判定を行うためのアルゴリズムについて研究を行った。 3次元の場合、2次元上に存在する任意の点に対する内外判定法と大きく異なり、平面におけるWinding Number AlgorithmやCrossing Number Algorithmといった既存研究をそのまま用いることができない。また、3次元複雑形状の場合、2次元複雑形状と大きく異なり、処理すべきデータサイズが膨大になってしまう。そこで、当年度では、前年度に作成した平面用の並列計算アルゴリズムを立体用に拡張することで、高速に判定するためのアルゴリズムについて研究を行った。 当年度の具体的な研究方針については、3次元形状の場合、前述したように処理すべきデータ数が非常に大きくなってしまうことから、GPGPUを用いた並列計算とネットワーク上に展開する複数のPCによる並列計算に適応することで高速化することを主題とした。本手法を用いることで、一部の実験的な複雑形状(プリミティブ形状)において、限定的な場合ではあるが、約10倍程度の処理速度向上が認められた。また、ネットワークのトポロジーやパケットについての有効性についても研究を行った。これにより、通信の無駄をなくすことで、演算処理に対して有効に働くことを検証できたとともに、より簡易的にネットワークに接続できるようになったため、結果として、多くのコンピュータをノードとして組み込むことが可能になり、高速化できると考えられる。 研究内容については、国際会議での口頭発表および論文として投稿させて頂いた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までに作成した「2次元用の並列計算アルゴリズム」を「3次元用の並列計算アルゴリズム」に拡張することで、高速化可能であるという結果を実際に得ることができた。 当年度においては、GPGPUやネットワークに接続された複数のPCを利用することで、限定的ではあるものの、3次元プリミティブ図形(3次元形状)に対して、研究したアルゴリズムを適応させれることで高速化できることを示すことができた。また、プリミティブ図形(3次元形状)から、一般的な非凸形状を含む3次元複雑形状に対しても本アルゴリズムを適用することが可能であることから、同様の結果を得ることが出来ると考えられ、当初の計画通りに順調に進展していると思われる。 研究内容については、「The 2017 International Symposium on Nonlinear Theory and Its Applications」および「The 9th International Multi-Conference on Complexity, Informatics and Cybernetics」にて口頭発表を行った。また、「International Journal of Modern Research in Engineering and Technology」や「International Journal of Computer Science and Information Security」にて論文として投稿させて頂いた。 以上のことから、研究の進捗状況としては「おおむね順調に進展している」と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度に作成したアルゴリズムを3次元複雑形状(非凸形状を含む)に対して適用することで、これまでに作成したアルゴリズムの有効性について実証したい。また、本研究を発展させることで、GPGPUを使用しない一般的なPCにおいても高速に結果を出力することのできる手法についても研究を行いたい。 具体的な今後の研究方針としては、実際に複数の任意の非凸複雑形状に対しても高速に結果が出力できることを実証したい。特にGPGPUを用いた手法については、これまでに行ったプリミティブ図形に使用した方法を適用することで、本手法の有効性を示したい。また、ネットワーク上に展開したPC(ノード)の簡易的なアクセス法や通信に使用するパケットの構造を改善することで、膨大なデータを高速に処理することが可能になると考えられるため、この方法についても今後の解決すべき中心課題としたい。 これまでの研究については、主に特殊な環境下(GPGPUや複数台のPCを用いたネットワーク環境)においての結果となっている。そこで、一般的な環境下(通常のPC等)においても高速演算できるアルゴリズムについても拡張することを考えたい。この研究テーマについては、今後、より発展するであろう3Dプリンタ(3次元印刷)やCADでの高繊細なモデリングの際にも非常に重要になると思われる。従って、そのような環境を意識したアルゴリズムについても応用できるようにしたいと考えている。 次年度(平成30年度)については、検証実験・アルゴリズムの研究開発以外にも、これまでの結果をまとめることで、研究論文、および、口頭発表として外部に発信したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当年度において支出予定であった論文の査読が次年度になったため、投稿費の予算を繰り越す結果となった。なお、論文自体の投稿はすでに行っているため、掲載の許可が下り次第、使用させて頂く予定である。
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