研究課題
水分解光触媒反応は、助触媒と呼ばれる金属ナノ粒子を光触媒上に担持させることで効率よく進行する。私たちはこれまでに、グルタチオン保護金クラスター(Aun(SG)m)を助触媒の前駆体として用いることで、光触媒(BaLa4Ti4O15)上へ微小金クラスターを精密担持させた光触媒を創製し(Aun-BaLa4Ti4O15)、微小金クラスター助触媒が水分解光触媒活性に与える影響について調べてきた。本研究ではまず、安定なグルタチオン保護金クラスターの一つであるAu25(SG)18を助触媒の前駆体に用いてAu25-BaLa4Ti4O15を創製し、水分解反応を分割して評価した。その結果、Au25-BaLa4Ti4O15はBaLa4Ti4O15に金ナノ粒子を担持させたAuNP-BaLa4Ti4O15よりも、同じ金の担持量において高い水素生成能を有していることが明らかになった。一方でこうした助触媒サイズの微小化は、逆反応の一つである光酸素還元反応も促進させてしまい、高い水素生成能を、水分解活性へと適用できていないことも明らかとなった。私たちはこうした知見に基づき、Au25クラスター助触媒のもつ高い水素生成能を活かした、高活性水分解光触媒を創製するために、光酸素還元反応の抑制にも取り組んだ。その結果、独自の酸化クロム膜作成法により、Au25クラスター助触媒のサイズを維持したまま、その周りを酸化クロム膜でコーティングすることに成功し(Au25@CrxOy-BaLa4Ti4O15)、非常に高い水分解活性を創出することに成功した。さらに、こうした酸化クロム膜によってAu25クラスター助触媒をコーティングすることで、紫外光照射後の金クラスター助触媒の凝集が、ある程度抑制できることも明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題の大きな目標の一つであった、金クラスター助触媒が水分解光触媒活性に与える影響について、明らかにすることができたため。さらにそうした知見を基に、金クラスター助触媒がもつ高い水素生成能を活かした、高活性水分解光触媒を創製することにも成功したため、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
昨年度は金クラスター助触媒の前駆体として、Au25(SG)18を用いた。しかし、チオラート保護金クラスターについては、他の化学組成の金クラスターについても精密に合成することが可能である。そのため、それらを助触媒の前駆体として用いることで、金クラスター助触媒のサイズが水分解光触媒活性に与える影響を、原子レベルの精度で明らかにしたいと考えている。またこれらの金クラスターは、金原子を異種元素で置換することも可能であるため、そうした合金クラスターを助触媒の前駆体として用いることで、異種元素の置換が活性に与える影響についても調査してゆく。
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