水素は燃焼により大きなエネルギーを放出する。また、水素の燃焼は水のみを発生し、環境に負荷を与えない。こうした特性を持つ水素は、エネルギー問題や環境問題を解決する新たなエネルギー源として、大きな期待を集めている。こうした水素を、太陽エネルギー(太陽光)と水から製造可能な、水分解半導体光触媒が長年注目を集めている。 水分解半導体光触媒は多くの場合、半導体光触媒と反応サイトとなる金属ナノ粒子助触媒から構成されており、光触媒の高活性化には、半導体光触媒の改良に加え、助触媒の改良も極めて有効な手段となっている。我々は、液相法にて合成された精密金属クラスターを助触媒として活用することで、助触媒を厳密に制御し、それにより、水分解光触媒を高活性化させることに取り組んでいる。本研究では、Au25クラスター担持BaLa4Ti4O15光触媒(Au25-BaLa4Ti4O15)を対象に、まず、助触媒の微細化が水分解の各素反応に与える影響の解明に取り組んだ。その結果、助触媒の微細化は、水素生成反応を加速させる効果があること、一方で、逆反応も加速させてしまうことが明らかになった。こうした特徴を持つ光触媒に対して、良い効果のみを抽出し、それにより、高活性な光触媒を創製するためには、逆反応を抑制する必要がある。そこで次に、Au25クラスター助触媒の凝集を抑制しつつ、その上にCr2O3シェルを形成させる方法の確立に取り組んだ。その結果、Au25クラスター助触媒の大きさを維持したまま、Au25クラスター助触媒をCr2O3膜に埋め込むことに成功し、こうした研究の実施により、Cr2O3シェルのないAu25-BaLa4Ti4O15よりも19倍程度高い活性を有する、高活性かつ高安定な水分解光触媒を創製することに成功した。
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