研究課題
本研究の目的は、心理指標と行動指標を組み合わせ、大学生における自閉性症状をはじめとした性格特性を定量的に記述する手法を確立することであった。大学生における自閉性症状の評価には、自記式の質問紙検査が用いられるが、他の手法はまだ確立されていない。主観報告以外では、近年、自閉症特性が高い者と低い者では人の顔に対する視線行動が異なることが報告されており、視線行動に注目することで自閉性症状の記述が可能になると考えられた。そこで本研究では、まず自閉症特性の高い者が苦手とすると考えられていた「まなざし課題」を写真データベースをもとに作成した。まなざし課題の成績が、自記式の質問紙検査で問うた自閉性症状の高さ・共感性の高さ・性格特性(big five)と相関するかを検討した。その結果、性格特性の個人差ではまなざし課題の正答率は回帰できないことがわかった。合わせてまなざし課題遂行時の視線計測を行い、自閉症特性の高群と低群で比較した結果は現在解析中である。一方で2016年度より、当初予定していなかった共同研究を開始する機会に恵まれた。歩行計測を専門とする生体工学者とともに、前方から他者が歩いて接近してくる際に、他者と衝突せずにすれ違う動作と、自閉症特性の高さの関連を検討した。その結果、自閉性特性の高い者ほど、衝突回避動作において腰の角加速度のノルムが大きかった。このことは、他者の接近の知覚が遅れた可能性を示唆した。次の実験では、前方から他者が接近する動画を光点のみで表したpoint-light displayを作成し、観察中の被験者の脳波を計測した。その結果、性格特性のうち外向性が高い者ほど接近する歩行者に対してN100の潜時が短いことから、外向性の高さが接近の素早い検出に関連している可能性が示された。今後さらに自閉性特性との関連について検討していく。
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