研究課題/領域番号 |
16K21410
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
岡林 堅 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (20409072)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 唾液腺 / 分泌型IgA / Cdc42 |
研究実績の概要 |
粘膜組織は、細菌やウイルスなど様々な病原体に感染するリスクが大きく、粘液など外分泌液に多く含まれる分泌型IgA(sIgA)を中心とした特有の免疫機構が存在している。口腔では、病原体だけでなく食物性タンパク質をはじめとする多くの外来抗原と生体が直接接する免疫の最前線であり、唾液中のsIgAによる粘膜免疫機構は重要な役割を果たしていると考えられる。sIgAの分泌機構は不明な点が多いが、次のように推察される。抗原提示を受けた活性化B細胞が、血液循環により粘膜面に分布し、IgA産生細胞である形質細胞に分化し、単量体IgAを産生する。次に、単量体IgAがポリペプチドであるJoining chain (J鎖)を介して二量体を形成する。生成された二量体IgAは、上皮細胞の基底側に存在するpolymeric Ig receptor (pIgR)に結合し、エンドサイトーシスにより細胞内に取り込まれる。二量体IgAと結合したpIgRは、secretory component (SC)に変化し、最終的にsIgAが形成され分泌される。また、IgAと結合しなかったpIgRも細胞外ドメインが分解されSCとなり分泌される。唾液腺においても多量のsIgAおよびSCが分泌される。Cdc42は低分子量Gタンパク質のRhoファミリーの1つであり、様々な細胞の形態形成、極性形成および細胞骨格系の制御に関わることが知られている。また、Cdc42の関与も含め細胞骨格系は、細胞内輸送に強く関与することが示唆されている。これらのことから、唾液腺細胞におけるsIgAの分泌においては、基底側膜におけるIgAのエンドサイトーシスから、細胞内輸送を経て腺腔側での分泌までに、Cdc42が強く関与すると考えられるので、そのメカニズムおよび分泌制御について解明していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ラット顎下腺由来培養細胞SMIE細胞を用いて、唾液腺におけるsIgAの分泌と低分子量Gタンパク質RhoファミリーのCdc42の関連性について検討している。研究計画として、まず凍結保存SMIE細胞を実験に適した状態まで培養し、安定した細胞を供給することである。次にテトラサイクリン抑制性トランス活性化因子安定発現SMIE細胞を作製し、さらにCdc42ドミナントポジティブおよびドミナントネガティブ安定発現SMIE細胞を作製する計画であった。しかし、SMIE細胞の特性などから安定発現細胞の作製について再度検討し、簡便さおよび作製効率を考慮した上でpEYFP-C1ベクターにCdc42を組み込んだプラスミドを用いたリポフェクション法に切り替えることとした。Cdc42に対する発現実験用遺伝子のベクターへの組換えおよび増幅、ならびに研究に使用するプラスミドの精製については終了している。トランスフェクション効率については、ベクターに組み込まれているYFP蛍光の検出によって判断する。変異Cdc42発現SMIE細胞をTranswell に培養し、基底側培地にIgAを添加し、SMIE細胞および腺腔側培地におけるsIgAを測定することで、唾液腺細胞におけるエンドサイト―シス、細胞内輸送、腺腔側への分泌とCdc42の関連性について検討する。
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今後の研究の推進方策 |
変異Cdc42発現SMIE細胞をTranswell に培養し、基底側培地にIgAを添加し、SMIE細胞および腺腔側培地のsIgAをELISAキットを用いて測定する。また同時に腺腔側培地のSCについてもELISAキットで測定する。これらの結果から、唾液腺細胞におけるIgAのエンドサイトーシス、細胞内輸送、腺腔側への分泌とCdc42の関連性について検討し、さらにsIgA分泌のメカニズムと制御における細胞骨格系の役割について考察する。また、本研究において得られた結果および技術を用いて、唾液腺のsIgA分泌に影響する他の因子についても探索を行い、分泌メカニズムおよびその制御、ならびに粘膜免疫機構について新たな知見を提供することを目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
変異Cdc42発現SMIE細胞の作製は、テトラサイクリン抑制性トランス活性化因子安定発現SMIE細胞を作製した上で、Cdc42ドミナントポジティブ、ドミナントネガティブの遺伝子を導入する予定であった。しかし、SMIE細胞の特性などから安定発現細胞の作製について再度検討し、簡便さおよび作製効率を考慮した上でpEYFP-C1ベクターにCdc42を組み込んだプラスミドを用いたリポフェクション法に切り替えることとした。本法への変更により、経費の削減につながった。
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次年度使用額の使用計画 |
変異Cdc42発現SMIE細胞を作製するためのリポフェクション法に必要な試薬および特殊培地の購入、ならびにpEYFP-C1ベクターにCdc42を組み込んだプラスミドを精製するためのキットの購入など消耗品費として使用する。
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