研究課題/領域番号 |
16K21411
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
八塚 春名 日本大学, 国際関係学部, 助教 (40596441)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 生業活動 / 植物の利用と認識 / タンザニア / 狩猟採集民 |
研究実績の概要 |
本研究は、近年、複合的に展開する狩猟採集民の生業と、その過程で生じる植物知識の変化の関係を、個人の生業実践の経験と関連させて考察し、現代狩猟採集民の人と植物のかかわりを多層的に描き出すことを目的としている。そのために、タンザニア共和国のサンダウェとハッツァという2民族を主要な対象として現地調査、文献調査、地理的分析の3つの手法を組み合わせた研究をおこなう。初年度である平成28年度は、まずサンダウェとハッツァの個人の複合生業実態を把握することと、サンダウェの野生植物の利用と認識に関するこれまでの知見を補足するためのデータ収集につとめた。 結果は以下のとおりである。サンダウェは今日では狩猟採集よりも農耕が生業の基盤になっているが、一方で農地の場所や各生業活動に対する比重には個人差が生じている。とくに、かれらが日々の生活のなかで頻繁に利用する「場」が異なることによって、利用する植物種や植物そのものに対する認知にも差が生じているようであった。なかでも本年度はAlbizia tanganyicensis(マメ科木本植物)の植物特性に関する認識にみられる個人差に注目したところ、過去に利用してきた植生、家畜飼養の経験などと大きく関連してそうであることがわかった。今後、植物学的な分析も含め、継続調査を試みる。 一方、ハッツァに関する調査では、民族文化観光に関わる人びとを対象としている。かれらは狩猟採集、観光、さらに季節ごとに農耕を実施するなど、生業選択に個人差が生じている。また植物利用については、採集活動に絞って検討してみても、かれら自身の利用場面と観光での利用場面とでは対象種が異なっていたり、観光の場では利用されるものが限定されることが観察できた。ただし、個人差までは今年度に調査を実施することはできなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、8-9月と2月の2回の現地調査を実施し、おおむね計画通りに研究を遂行することができた。とくにサンダウェの居住地域においては、過去の調査で得たデータを補足するような新しい資料収集を実施したり、平成29年度に継続すべく調査の基盤をつくることができた。 しかしハッツァの居住地域における現地調査では、調査期間が十分に確保できなかったこともあり、まだ資料が十分だとは言えない。とくに、野生植物利用が盛んになる雨季に現地調査を実施できなかったことが、ハッツァの植物利用と認識に関する資料不足の原因だと考えている。 また、空中写真と衛星画像の分析をおこない、農地やキャンプ地などの場所および数や面積の推移を実証的に明らかにすることも、平成28年度の計画としていたが、ハッツァの居住地域についてはこれがまだ実施できていない。これらについては、平成29年度の課題とする。 現在、関連する学会での報告と成果論文の執筆に向けて調査結果を分析している。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、8-9月の現地調査を予定している。とくに平成28年度に十分に資料が収集できなかった、ハッツァの植物利用と植物認識について、重点的な調査を進めることを計画している。また、現地調査までに空中写真と衛星画像の分析を進め、地理的な変化を把握したい。 また平成29年度は、5月の日本アフリカ学会においてサンダウェの植物利用と認識に関する口頭発表をおこなう。さらにサンダウェによる植物の利用と認識に関する論文と、ハッツァの生業活動の個人差に関する論文を執筆する。平成29年度はそれぞれ個別の論文を執筆するが、最終年に向けて、サンダウェとハッツァの比較を念頭において、分析を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は現地調査において植物同定を依頼する種数が少なかったこと、ハッツァでの調査日数が短かったこと、衛星画像を購入し分析する計画が遂行できなかったことにより、予定より使用額が少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度に、前年度に実施できなかった現地調査を実施することと、衛星画像を購入することを検討しており、残額はそれらに利用する。
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