研究課題/領域番号 |
16K21415
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
田草川 みずき 千葉大学, 国際未来教育基幹, 准教授 (10367097)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 稽古事 / 謡 / 義太夫節 / 古典演劇 / 近世文学 |
研究実績の概要 |
研究計画3年目の今年度は、かねてより着目している「噺本」について、引き続き国文学研究資料館(https://www.nijl.ac.jp/)等の各種データベース、特に「噺本大系本文データベース」 (http://base1.nijl.ac.jp/infolib/meta_pub/CsvSearch.cgi)を使用しながら、稽古事について記された箇所の抜粋・分析を進めている。 また今年度は、本研究の重要課題のひとつである【稽古事関連資料の収集】の一環として、国立国会図書館所蔵資料の調査を行った。特に近世後期から明治時代にかけての資料について、義太夫節の教則本が、改題や合綴を繰り返し、明治期に至っても刊行され続けた様相を明らかにすることを目指している。この調査結果の一部は、国立国会図書館ホームページのデジタルコレクション・貴重書データベース(http://dl.ndl.go.jp/search/searchResult?categoryTypeNo=1&categoryGroupCode=C&categoryCode=02&viewRestrictedList=0|2|3)に、10点分の資料解題として掲載される予定である。 なお、昨年度から取り組んでいる、謡・義太夫節・長唄等々の「古典演劇譜本」における、出版・形態・記譜方法等の変遷についての考察を、論考「日本古典演劇譜本の近代―その変容と明暗」(『東アジア古典演劇の伝統と近代』勉誠出版、2019年3月)にまとめた。 その他の成果としては、稽古事文化の研究と深く関わる、現在の古典演劇のあり方について、特に義太夫節人形浄瑠璃の演劇評という形で考察・公表している。演劇評執筆では、本研究等で得られた作品の歴史的変遷を踏まえ、正しい伝承に貢献することを目的としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
稽古事関連資料の収集、および成果発表を含め、調査・研究は順調に進展しているが、「噺本」の分析が長引いているため、来年度にはこの点について何らかの成果をまとめたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、以下の二つの課題を、同時並行的に進める。 1、近世文化に現れた稽古事文化の分析 2、稽古事関連資料の収集 今年度は、双方の課題について研究成果の発表を行えたので、課題の残った「噺本」の分析を続けながら、次の調査対象資料(草双紙等の近世文学作品)に研究範囲を広げる。稽古事関連資料の収集については、国立国会図書館所蔵資料の調査を続けるとともに、複数の所蔵機関での調査を予定している。 また、2018年度には、新潟県立歴史博物館の依頼によって、佐渡地方の人形浄瑠璃についての講演の機会に恵まれた。佐渡地方の人形浄瑠璃に関しては、以前論文を執筆していたことから関心があったが、時を経て、その伝承はより一層危うくなってきていることを実感した。中央の都市ではない、地方の素人が担い続けてきた佐渡の人形浄瑠璃の伝承についても、2019年度の新たな課題として、上記1・2の視点から考察を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度末に、神戸女子大学・古典芸能研究センターへの出張を予定していたものの、都合により2019年度に延期した。次年度使用額となった71,735円は、2019年度の夏期に同センターへの出張に使用する予定である。
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