研究課題/領域番号 |
16K21419
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研究機関 | 星薬科大学 |
研究代表者 |
奥 輝明 星薬科大学, 薬学部, 講師 (20409361)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Coronin-1 / LpdC / PKC / リン酸化 / 結核 / 細胞内寄生 / 貪食 / アクチン結合タンパク質 |
研究実績の概要 |
本研究は、結核菌の細胞内寄生機構の解明を目指し、免疫細胞特異的アクチン結合タンパク質Coronin-1と結核菌(Mycobacterium bovis BCG)に発現するLipoamide dehydrogenase C(LpdC)の相互作用の詳細な解析を行っている。 生体に侵入した細菌はマクロファージや好中球などの食細胞に貪食され、細胞内のリソソーム酵素によって殺菌・分解される。食細胞に発現するCoronin-1はファゴソームに一過性に集積し、解離後にリソソーム融合が起こることが知られている。しかしながら、結核菌を取り込んだファゴソームにはCoronin-1の持続的な集積が認められ、リソソーム融合が起こらないことが明らかにされた。これらより、結核菌は宿主のCoronin-1の細胞内局在を制御し細胞内寄生性を獲得していると考えられている。Coronin-1はファゴソームから解離する際にリン酸化されることや、結核菌のLpdCがCoronin-1に結合することが明らかになったため、結核菌の細胞内寄生機構を解明するためには、LpdCがCoronin-1のリン酸化に与える影響について解析を行う必要があると考えられた。 結核菌のゲノムDNAを用いて、組換え体LpdCの発現ベクターを作製した。精製した組換え体LpdCをマウスに腹腔内へ投与した後、脾細胞をミエローマ細胞と融合させLpdCに対するモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを樹立した。結核菌の培養上清中にLpdCが含まれること確認した後、プルダウン法により、Coronin-1はLpdCに結合することが明らかになった。また、Coronin-1のリン酸化とLpdCの結合について検討したところ、412番目のトレオニン残基をリン酸化させた場合においてLpdCの結合性が消失した。一方で、2番目のセリン残基のリン酸化は影響しなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究に必要なLpdCの発現ベクターや抗体、組換えタンパク質などが得られた。また、これらを用いたCoronin-1とLpdCの結合実験も順調に進んでおり、リン酸化Coronin-1はLpdCに結合しないことや、そのリン酸化部位が412番目のトレオニン残基であることが明らかになった。さらに、非病原性の抗酸菌(M. smegmatis)に発現するLpdCのホモログであるLpdA(アミノ酸レベルの相同性約85%)との結合実験も行い、LpdAとの差異を見出した。LpdAはLpdCと比較してコレステロール結合配列を有していないため、LpdCのCoronin-1への結合にコレステロールが必要だと考えられたが、コレステロールを介さない結合である可能性が示された。また、H29年度に行う予定である貪食実験の準備も進んでおり、LpdCでコーティング粒子の調製を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きCoronin-1のリン酸化とLpdCの結合の関係性について解析を行う。現時点の結果は、「リン酸化Coronin-1にLpdCは結合しない」であるが、「LpdCが結合したCoronin-1はリン酸化されるのか?」を明らかにする。食細胞のファゴソーム膜上においてLpdCがCoronin-1に結合する理由が、「Coronin-1をリン酸化させない」つまり「ファゴソーム膜に局在を維持させてリソソーム融合を起こさせない」であるかを検証する。 本研究において、我々はCoronin-1とLpdCの結合を阻害する抗Coronin-1抗体を有していることが示唆された。結核菌の感染予防や治療への抗体の応用性を考案したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であった消耗品の在庫および生産が年度内に満たされなかったために、未使用金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
現在、消耗品の生産が完了したとの連絡があったため、予定通りに研究計画が進められる。
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