本研究は、免疫細胞特異的アクチン結合タンパク質Coronin-1と結核菌(Mycobacterium bovis BCG)に発現するLipoamide dehydrogenase C(LpdC)の相互作用を解析することにより、結核菌の細胞内寄生機構の解明を目指している。 結核菌が分泌するLpdCは、細胞内にてCoronin-1に結合し機能制御を行うことで正常な貪食作用の進行(ファゴソームからのCoronin-1の解離およびリソソーム融合)を妨げ、結核菌の細胞内寄生性発現に関連することが示唆されている。Coronin-1のリン酸化はファゴソームからの解離に必要であると考えられるため、LpdCの結合はCoronin-1のリン酸化に影響を与えることが予想された。in vitroにおけるCoronin-1とLpdCの結合実験より、リン酸化Coronin-1へのLpdCの結合性は著しく低下していることが明らかになった。LpdCと非病原性抗酸菌(M. smegmatis)のホモログであるLpdAのCoronin-1への結合性を比較し、その差異について報告したが、さらなる解析の結果、両者ともに結合性を有する可能性が明らかになった。LpdAおよびLpdCのCoronin-1への結合後における機能や、発現量の違いについては今後の検討課題である。 LpdC固相化ビーズを作製し、マクロファージを用いた貪食実験を行ったところCoronin-1のファゴソームからの解離が認められ、結核菌貪食のモデルとはならなかった。ビーズへのLpdCの結合量や結合方法による活性への影響、他の因子の必要性などが原因として考えられた。また、LpdCに対するモノクローナル抗体(IgG1)を作製した。本抗体は、LpdCのC末端領域を特異的に認識すること、LpdCとCoronin-1の相互作用に影響を与えないことが示された。
|