研究課題/領域番号 |
16K21427
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
勝見 尚也 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (40769767)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | HULIS / エアロゾル / NMR |
研究実績の概要 |
大気エアロゾルや大気水相中には,水圏や土壌圏のフミン物質と化学構造が類似した高分子有機化合物であるフミン様物質(HULIS)が存在し、大気環境において有害大気汚染物質の輸送や気候変動に大きな影響を及ぼしていることが示唆されている.しかし、それらの定量方法が研究者間で統一されていないことや、化学構造や起源については決定的な方法が確立されていない等の問題から、大気中におけるHULISの実態については不明な点が多い。本研究では、(1) HULISの定量方法の確立、(2) NMRを用いた化学構造解析、(3) 安定および放射性同位体を用いた起源解析を行うことで、大気環境中におけるHULISの実態解明を行うことを目的とする。本年度は、HULISの起源と化学構造特性の関係性を中心に検討した。東京都新宿区において、春季と夏季に集中サンプリングを行い、大気エアロゾル中HULIS濃度に気象因子と大気汚染物質が及ぼす影響を調べた。その結果、春季にはCOおよび花粉、夏季にはNO2およびOXによって大気中HULIS濃度が規定されていた。このことから、HULISの起源は、春季では燃焼と花粉、夏季では自動車排ガスと二次生成の影響を強く受けており、季節によってHULISの起源や生成プロセスが異なることが示唆された。次いで、HULISの起源と化学構造の関係性を明らかにすることを目的に、それぞれの季節に採取したエアロゾルからHULISを抽出し、1H NMRの測定を行った。その結果、季節間でHULISの化学構造に明瞭な差が確認され、(1)燃焼と花粉の影響を強く受けている春季では芳香族性が高いことに加え、植物起源と考えられる糖類の寄与がより大きいこと、(2)二次生成の寄与が大きい夏季は芳香族性が低く、メチレン鎖がより発達していることが明らかとなり、起源と化学構造の関係を明確にすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、東京都心におけるHULISの起源と化学構造特性の関係を明らかにする事ができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、(1)東京都心だけではなく様々な研究サイト(山岳域や海域)を活用することで起源と化学構造の関係性をより明確にすること、(2)昨年度は炭素の安定・放射性同位体分析が1点しかできなかったため、分析数を増やすことを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度末までに論文投稿が完了せず英文校正費および掲載費が計上できなかったこと、調達方法の工夫などにより計画当初より経費の節約ができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
生じた差額は論文投稿費、消耗品などへの使用を予定している。
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