研究課題/領域番号 |
16K21433
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
大橋 賢裕 東京理科大学, 経営学部ビジネスエコノミクス学科, 助教 (10583792)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 金融論 / 経済理論 / ゲーム理論 / マーケットマイクロストラクチャー |
研究実績の概要 |
証券市場で用いる取引システムが相場操縦の影響を受けないためには,『情報効率性』と『価格安定性』を持つことが必要である.これに対し「慣性駆動型」の相場操縦を実行すると,どちらの性質も保たれない.平成28年度は,「慣性駆動型相場操縦」を未然防止するための価格メカニズムについて研究した.「慣性駆動型相場操縦」とは,価格の動きに追随して取引を行う人たち(モメンタム・トレーダー)を利用することを目的に,市場価格をあえて大きく動かす行為をいう.伝統的な金融経済学においてanomalyとされる現象のなかには,こうしたモメンタム・トレーダーがいないと説明がつかないものがある.また,過去の価格の動きを参照することにはある一定の合理性があることがわかっている.だが一方で,モメンタム・トレーダーの行動はパターン化されているといえるため,彼らを利用した相場操縦行為の可能性が考えられる. 本研究のモデルでは,(1)投機家が大量の買い注文を出し,かつ(2)ディーラーたちが過剰に高い価格をつけたとき,慣性駆動型相場操縦は成功し,投機家・ディーラーともに大きな利益を得,モメンタム・トレーダーは損失を被る.このとき市場価格は正しい情報を反映せず,乱高下するため,情報効率性・価格安定性ともに損なわれる. 本研究の中心は,投資家とディーラー間で,モメンタム・トレーダーの存在について共通の認識が持てないという,より現実的かつ妥当な状況における分析にある.主要結果は次の通り:もしこの認識の不一致の程度が十分大きければ,顧客に対して最も有利な価格で取引させる『一意価格メカニズム』を採用すると,投機家・ディーラーともに相場操縦行為をしないことが唯一の均衡になる;しかしディーラーの個別価格で取引できる『個別価格メカニズム』を採用すると,認識の不一致の大きさにかかわらず,相場操縦行為は均衡行動として実現しうる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究目的と関係はあるが異なる研究(上述)に時間を費やしたため,進捗状況は芳しくない.
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今後の研究の推進方策 |
関連研究論文を読み,自身の研究の目的と価値を明確化したうえで,理論モデルを構築する.
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次年度使用額が生じた理由 |
海外への出張がなかったため.
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次年度使用額の使用計画 |
海外出張.(もし海外出張が実現しなかった場合は,英文校正費,PC関連,および図書の支出に充てる.)
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