研究課題/領域番号 |
16K21433
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
大橋 賢裕 東京理科大学, 経営学部ビジネスエコノミクス学科, 助教 (10583792)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | メカニズムデザイン / ゲーム理論 / 遂行理論 |
研究実績の概要 |
市場取引を含む広範な取引システムにおいて,「システムダウン」のような望ましくない事態を防ぐための予防策を,制度として事前に設けることが可能かを理論的に追求する研究を行った.特に筆者は,システムに参加している人数が非常に多く,かつ一人ひとりがシステムに対して与える影響力が非常に小さいせいで,個人単体の行動だけではシステムの結果は変わらないという環境を分析した.例えば銀行預金契約において,多数の小規模契約者のうち,一人だけが解約しても,銀行はすぐさま破綻するわけではない.このような,個人単体の影響力を無視するシステムを所与としたとき,標準的な非協力ゲーム理論の均衡概念をそのまま使うことはできない.そこで筆者は次の2つの均衡概念を新たに提示した.システムに参加している人口のうちその何割かが想定外の行動(システムエラー)を取ったせいで,元の結果と違う結果が出るとき,(1)その想定外行動を取った人たちは全員元の結果を好む,(2)システムに参加している全員が元の結果を好む.もしシステムの想定が(1)を満たしていれば,エラーの許容割合を下回るいかなる行動に対してもシステムは安定的になる.よって,許容割合以下のエラーについては,誰も意図的に起こそうとはしない.だが,意図されないエラーが発生したとき,それに乗じて想定外の行動をとるインセンティブをシステムは内包しているかもしれない.その可能性をつぶすため,筆者は(2)の条件も考慮して分析を行った.今年度は,これら2つの均衡概念を用いて,参加者全員がシステムの状態を知っている場合に,システムの想定通りの結果を一意的に遂行できるための必要条件と十分条件をそれぞれ導いた.今年度は,参加者が必ずしもシステムの状態を知らない場合について,同様の特徴付けを行いたい.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究分野の慣習に照らし合わせると,本研究の場合,与えられた均衡条件のもとでシステムの結果の一意性を保証するための必要条件または十分条件を特徴付ければ,一定の成果が得られたと認められるため.ただし研究論文としては未完成であるため,完成に向けて努力したい.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度は参加者全員がシステムの状態を知っている場合に,システムの想定通りの結果を一意的に遂行できるための必要条件と十分条件をそれぞれ導いた.今年度は,参加者が必ずしもシステムの状態を知らない場合について考え,同様の特徴付けを行いたい.また,応用例についても研究したい.特に預金契約における取付や金融システムの連鎖破綻の発生防止を念頭に置いて,研究成果を応用できるか検討したい.加えて,研究報告をまだしていないため,今年度は研究報告も行いたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究報告のためのセミナー参加とその準備ができなかったために,使用額が生じた.今年度はセミナー参加のための旅費または参加費と報告のための機材の購入などへの支出を考えている.
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