近地津波の際には、沿岸域の人びとにはできるだけ早く避難行動を開始することが求められる。本研究では、そういった避難行動を実現するための条件について理解を深めるべく、国内外のさまざまな地域における近年の災害事例をもとに、津波災害時の避難行動について分析を進めてきた。2017年度に得られた主な研究成果を以下に示す。 まず、2009年から2011年の間に発生した津波災害における避難行動の実態を現地で調査した国内外の文献を収集し、その調査結果を整理した。加えて、それらの調査結果の中のアンケート結果等の定量的なデータに着目し、避難行動に関する比較分析を行った。これらの結果、地震発生後に避難行動を開始するきっかけは地域によって異なっていたことがわかった。また、その背景には、それぞれの地域における津波災害の発生頻度の違いにともなう津波災害に関する知識や意識の違いがあることが示唆された。発生頻度が比較的高い場合は、いずれの地域においても地震による揺れをきっかけに避難を始めた人の割合が高かった。発生頻度が比較的低い場合は、津波警報システムが機能しなかった地域では大きな音や津波の視認などが、津波警報システムが機能した地域では公共機関からの津波や避難に関するメッセージが、それぞれ避難のきっかけとなっていたことが多かった。これらの結果については論文にまとめ、国際学術誌へ投稿中である。また、これらの結果を考慮した避難シミュレーションモデルについても検討を進めた。
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