研究課題/領域番号 |
16K21441
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
上野 聡 東京工科大学, 工学部, 講師 (50514139)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 付加反応 / カルボニル化合物 / 不飽和結合 / 触媒 |
研究実績の概要 |
本研究ではカルボニル化合物のβ位の炭素ー水素結合の不飽和結合への触媒的付加反応の開発を目指している。平成28年度は、これまで本研究グループで開発したβ位の官能基化反応において良好な結果を与えていた触媒や塩基、配位子、溶媒などを中心に反応条件の検討を行った。基質としては、ケトンやニトリルを用い、アルキンやアルケンなどへの付加を検討した。その結果、目的生成物を低収率ながら得ることに成功した。当初、ロジウム触媒を用いたときに比較的良好な結果を示していたが、それ以上の収率の改善が見られなかった。一方、パラジウム触媒に変更したところ、ロジウム触媒の結果を上回る収率で目的生成物が得られた。最終的に収率は90%以上を目標としていたがまだそこまでには至っていない。これからは本研究テーマに取り組む研究協力者を増やす。また、触媒や基質についてもより一層検討していくことで収率の改善を行う。 また、反応条件を種々検討していく中で、目的としたβ位ではなくα位において単純なアルキンに対する付加生成物を与えることが分かった。この反応は一部の基質で進行したり、金属触媒を添加することで進行することは既に報告されているが、今回は触媒を添加しなくても進行した。当初の平成28年度の目標であった目的生成物を得ることはできているが、まだ十分な収率ではなく一層の改善が必要である。収率が大きく改善しない理由として、副反応が進行してしまうことがあげられる。これらについて詳細に分析すると、これまでに知られていない新規な触媒反応が進行していることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の本研究計画では標準基質としたケトンとアルキンの付加反応を研究計画としており、目的生成物を中程度の収率で得ることができた。また、ロジウム触媒やパラジウム触媒を用いた時に良好な結果を与えることも分かった。一方でこれまで当研究グループによるβ位官能基化で良好な結果を示したニッケル触媒では目的生成物は得られなかった。またこの研究途上において、アルキルケトンとアリルエステルの反応において脱水素化を伴う芳香環形成反応が進行することがわかった。これは置換ベンゼンを合成する有力な方法と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に得られたロジウム触媒やパラジウム触媒における知見を基盤にして更なる検討を行う。特に配位子の検討を行う。この反応の収率を向上させることに成功した後に、ケトン以外のカルボニル化合物やアルキン以外の不飽和結合との反応を行うことで、本反応をより汎用性の高い有用な反応へと確立していく。また、平成30年度には不斉反応や炭素ーヘテロ原子結合形成へと展開していくために、今後本研究に取り組む研究協力者をさらに増やすことで改善する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今回次年度使用額が生じた理由として消耗品を節約して使用したために当初の予定より消耗品費が少なくて済んだことがあげられる。
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次年度使用額の使用計画 |
当初より平成29年度に実施予定であった種々のカルボニル化合物や不飽和化合物の実験に必要になる薬品の購入に充てる。
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