本研究では、既に産学連携で行っている研究会での研究を進め、コンテンツ産業における無料を利用したビジネスモデル(フリー型ビジネスモデル)の消費者行動について、長期利潤最大化戦略や新ビジネスの代替効果などに着目し、定量的分析を行って経営的含意を導くことである。本研究の特徴は、定量的分析をベースとしていることと、分野横断的に様々なコンテンツ産業を対象とすること、そして、シンクタンク保有の豊富なパネルデータを利用することである。平成29年度は、昨年度から研究対象を広げ、映像・ゲーム・書籍・音楽のすべてを対象とし、アンケート調査データや、CDや無料配信に関するパネルデータを用いて、無料財がビジネスに与える影響を定量的に検証した。その結果、音楽産業では公式無料配信が売り上げにプラス(弾力性は0.11~0.19程度)だが、海賊版は音楽・映像産業で売り上げにマイナスであること(弾力性は-0.23と-0.19)等が明らかになった。本分析の結果は情報通信学会等で随時発表を行ったほか、国際会議(European Association for Research in Industrial Economics)にて発表を行った。また、昨年度の活動と合わせ査読付き論文誌にもいくつか投稿を行い、現在審査中の物が数本と、国際ジャーナル等に掲載済みのものが数本ある。 さらに、関連研究として、ネット上のクチコミ等の情報シェアに関する研究も行っている。これは、コンテンツ産業が経験財でありクチコミの効果が高いと考えられ、実際に多くの財についてクチコミ・レビューが書かれていることから関連研究としている。これらの成果は査読付き論文誌にいくつか掲載され、投稿中の物もある。
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