研究課題/領域番号 |
16K21451
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研究機関 | 福井工業大学 |
研究代表者 |
杉浦 宏季 福井工業大学, スポーツ健康科学部, 講師 (20736144)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 不随意的な刺激 / 高齢者 / 転倒 |
研究実績の概要 |
高齢期におけるバランス能力は、歩行能力や転倒リスクと密接な関係があることから、バランステストは転倒リスクのスクリーニングに利用されている。バランス能力は、「外乱に対して身体重心位置を留める能力」と定義されており、身体アライメントや筋力、柔軟性などが関与する。転倒回避能力に関連したバランス能力を評価するために、ファンクショナルリーチテストや Limits of stability テストなどが開発されている。これらのテストは随意的に身体を動かした時のバランス能力を評価する。しかしながら、一般的に、転倒は偶発的に生じるため、身体が不随意的な刺激を受ける時に安定姿勢を保持するバランス能力の評価も重要と考えられる。前述のバランス能力を評価するため、近年、不安定板上での姿勢保持テストが開発されている。不安定板上では、支持基底面が随時変動するため、重心位置が常に変動する不安定な状況下で立位姿勢を保持し続ける必要がある。このテストの成就度が劣る者は、バランス能力を含んだ各種身体機能に劣り、転倒リスクが高いと仮定される。本年度は、60歳以上の女性高齢者137名(年齢76.6±6.2歳、身長147.8±5.4cm、体重49.3±7.5kg)を対象に、不安定板上での姿勢保持能力と下肢筋力(股関節屈曲筋力、膝伸展筋力、および足趾把持力)およびバランス能力(開眼片脚立ちおよびファンクショナルリーチ)の関係、ならびに転倒との関連性を検討することを目的とした。その結果、不安定板上での姿勢保持能力は、下肢筋力およびバランス能力との間に顕著な関係はないが、転倒経験を有する高齢者の多くは、不安定板上での姿勢保持の成就自体が困難であることが明らかにされた。前述の高齢者の中には、体力水準の高い者も含まれることから、今後、さらに解析を進める必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画どおり研究を遂行し、国内学会発表、国際誌への投稿、大学紀要への投稿を行い、成果を報告した。また、次年度に実施する「不安定な歩行路上での歩行の成就度の検討」について、歩行路の開発を連携企業と進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に収集したデータ分析を進めるとともに、制作した道具を利用し、不安定な状況下での歩行能力と転倒の関連について明らかにしていく。そのため、今年度も介護一次・二次予防対象高齢者100名程度に調査および測定を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として、平成29年度計画の「不安定な歩行路上での歩行の成就度」の検討について、歩行路の製作費が安価であったことが挙げられる。測定を公民館等の施設で実施するため、運搬が楽であること、準備に時間を要さないことを考慮して開発を進めた結果、既存の製品を改良することで対応可能となった。
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次年度使用額の使用計画 |
これらの金額と次年度以降に請求する研究費を合わせた使用計画として、各種体力を測定する機器を購入し、より詳細に「不随意的な刺激」との関係を検討していく。また、それに伴い測定項目が増えるため、人件費および謝金としても使用していく。
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