近年、活動的な高齢者の平衡能力を評価するために、不安定板上での姿勢保持テストが用いられている。このテストは、身体の重心位置により不安定板が変動するため、成就するためには、不安定な状況下で姿勢を保持し続ける必要がある。しかし、加齢に伴う体力低下により前述の成就度も低下する傾向にあるが、どの体力要因が影響しているかは明らかでない。本研究の目的は、不安定板上での姿勢保持の成就度と各種体力の変化を縦断的に検討することであった。左右に揺れる不安定板上で20秒間の両脚立ちが成就可能な高齢者52名を対象とし、1年後も成就可能な35名を成就群、1年後に成就不可能になった17名を非成就群に分類した。前述の測定には、ディジョックボードを用いた。評価変数には、身長、体重、股関節屈曲筋力、膝関節伸展筋力、片脚立ち支持時間、FR、10m歩行時間、敏捷性ステップ時間、及び股関節移動距離を選択した。2要因分散分析(成就×時期)の結果、身長のみ有意な交互作用が認められ、非成就群は身長が低下した。片脚立ち支持時間、10m歩行時間、敏捷性ステップ時間、及び股関節移動距離の成就要因に有意な主効果が認められ、いずれの時期においても非成就群は成就群よりも劣った。以上、不安定板上での姿勢保持が成就不可能になった高齢者は、身長の低下、つまり姿勢変化の影響が大きいと考えられる。
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