昨年度までに構築した、教育にも労働にも従事していない児童(stay idle)が出現し、それが発展途上国の厚生や経済発展にどのような影響を与えるのかを分析するためのモデルをもとに、今年度はコンピュータを用いたシミュレーションにより定量的な厚生分析と政策分析を行い、児童労働撲滅と経済発展に対する有効な政策を考察した。特に近年注目されている児童労働の削減や教育促進に関する政策である、条件付き現金給付(CCT)やFood-For-Education、PROGRESAについて、本研究におけるモデルをもとに経済発展に与える影響の分析を行った。結果の概要としては、それらの政策は児童労働の削減に対して有効なだけではなく、さらに教育にも労働にも従事していない児童を減らし教育をより促進する効果を持つことを確認した。実証研究で明らかにされているように教育にも労働にも従事していない児童が発展途上国に存在する状況で、どのような政策が有効かを定性的にも定量的にも分析し、考察を示すことができた。これは既存の児童労働や教育政策の研究に新たな側面を提示し、政策の効果をより詳細に示すことができたと言える。 最後に本研究課題に関連するその他の研究成果を述べる。1.天然資源の豊富さが開発途上国の発展に与える影響について、人的資本を通じた経路を調べるモデルを構築し分析を行った。この成果は2018年6月にベトナムで行われたThe 2018 International Conference on Public Economic Theoryで報告された。2.発展途上国のガバナンスが児童労働の水準にどのような影響を与えるのかを分析するモデルを構築し分析した。この研究は3つのカンファレンスやワークショップで報告された。
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