本研究は魚アレルギー免疫療法の基盤的研究として、魚抗原・ペプチドを特定し、魚アレルギーマウスに投与することで免疫寛容を成立させる画期的な治療薬創製の可能性を探求するものである。最終年度は、抗原調製、ならびに、抗原に対する感作マウス血清中IgEの反応、細胞増殖試験の検討実験を主眼に置き研究を実施した。魚抗原の作製:前年度、14種の抗原候補物の遺伝子を受託合成し、大腸菌の発現系を用いて蛋白質10種を合成した。残り4種の調製については発現・精製行程に課題があるため完了できなかった。感作マウス血清を用いた抗原の特定:調製した抗原に対して、魚粗抽出物で感作成立したマウス血清のELISAを実施した。結果、PBS(未感作)群と同等の反応性であり有意な差が得られなかった。魚粗抽出物を用いた細胞増殖試験:2016年度で得られた結果を基に実施したが、試験系の再現性が得られなかった。IgEエピトープの特定:抗原反応性の課題が生じたため実験を保留としている。 抗原調製に関しては、他の菌株の採用、行程の見直し等検討が必要である。マウスを用いた各試験系の検討について、総IgE値やIL-13の産生量は顕著に増加し感作が成立したと考えられる。しかしながら、抗原に対するIgE反応性や細胞増殖試験では良好な結果が得られなかった。おそらく、ELISA、細胞増殖試験の両試験系については感作のみ成立したマウス試料のみでは感度不十分の可能性が示唆される。そのため、アレルギー状態を増強させる経口惹起試験など高感度な試験系の実施が必要であり、当研究期間が終了しても引き続きこれら課題を克服し進める予定である。
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