本研究の目的は,地域づくりによる転倒予防戦略として,厚生労働省が推進する高齢者の社会参加の中でも地域におけるスポーツグループへの参加に着目し,協力自治体において地域在住高齢者を対象としたコホート研究を行うことである. 最終年度(平成30年度)では,パネルーデータやコホートデータを用いた分析から以下の2点が明らかとなり,両者とも学会にて発表を行った. 1. 転倒発生の関連要因として報告されている転倒不安感に着目し,高齢者が運動を1人で行うことよりもスポーツグループに参加して行うことで転倒不安感が低下するのかを,2時点パネルデータを用いて検討した.結果,まず運動をしていない者と比較して運動を行っている者で転倒不安感の発生が低下していた.また,運動の取り組み方の違いでは,運動を1人で行っている者よりスポーツグループに参加して行っている者で転倒不安感の発生がさらに低下する可能性が示された. 2. スポーツグループへの参加による介護予防効果を検討するため,要介護状態に陥る中間的な段階とされるフレイル高齢者においても,スポーツグループへ参加している者で要介護認定の発生が少なくなるのかをコホートデータを用いて検討した.結果,フレイル高齢者を対象としても,スポーツグループに月1回以上参加している者で要介護認定発生は低下しており,その介護予防効果は健常高齢者よりフレイル高齢者の方で高いことが示唆された. また,論文化を進めていた運動を1人で行う者よりもスポーツグループに参加している者で転倒経験が少なく,その機序として身体活動頻度や心理的側面の関与の存在を明らかにした研究が,国際誌に採択された.
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