研究実績の概要 |
本研究では、高い熱電変換出力を示すFe2VAl系熱電材料を対象とし、材料の薄膜化・人工超格子化によってその格子熱伝導度を積極的に制御することで、熱電変換効率の向上および人工超格子膜が与える格子熱伝導度の定量的な評価を試みた。 Fe2VAl系薄膜試料は工業的に応用が容易である高周波マグネトロンスパッタ法によって作成した。Fe2VAlと重金属(Mo, W)を交互に成膜させることで、人工超格子膜を作成することに成功した。作成した試料の面直方向への熱伝導度は時間分解パルス光加熱サーモリフレクタンス法によって測定した。試料の結晶性・平滑性を評価するために、高輝度放射光施設SPring-8でのビームタイムを獲得し、X線反射率測定や逆格子マッピングを実施した。 本研究で作成したFe2VAl/重金属系人工超格子は、例えば分子線エピタキシーなどのような高度な制御がなされていないため、Fe2VAl/重金属層の界面に粗さが確認された。さらに、構成する材料の結晶格子は互いに格子定数が大きく異なり、界面近傍での歪みも確認された。しかしながら、本研究にて得られた熱伝導度は、すでに報告されている理想的な条件で作成された人工超格子膜が示す特異な熱輸送特性と酷似していたため、この興味深い熱輸送特性をデバイスへ応用できる可能性を示すことに成功した。また、Fe2VAl/重金属間の界面での熱抵抗は重金属層の種類に依存することを示し、この影響は界面の粗さよりも材料間の質量差による影響が支配的であることを突き止めた。これらの結果は適切な材料の選択により、能動的に熱伝導度を制御できることを示しており、より効果的な断熱効果を持つ材料・デバイスの開発につながることが期待される。 本研究の成果は現在Journal of Applied Physicsにて査読中であり、早期の受理を目指し対応を進めている。
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