脳卒中後の上肢浮腫の原因の1つとして静脈うっ滞が影響している.本研究の主目的は,健側上肢運動によって患側上肢の静脈還流が促進されるのか確認することであった. 最終年度では脳卒中患者を対象とした.研究期間全体を通して,脳卒中患者21名の協力を得た.対象者には背臥位および座位で健側ハンドグリップ運動を実施してもらい,その間の患側上肢静脈還流を腋窩静脈で計測した.加えて,健側ハンドグリップ運動においては抵抗なしと抵抗あり(最大握力の30%の強度)の方法で運動を実施してもらった.計測においては,超音波診断装置を用い,血管径および血流速度を計測した.また,上肢全体の浮腫の程度を計測するために,超音波診断装置および生体電気インピーダンス法を用いた. 背臥位および座位ともに,安静時と比較し,健側ハンドグリップ運動によって患側上肢の腋窩静脈の血流速度が増加した.また,静脈還流も有意に増加した.さらに,ハンドグリップ運動について抵抗なしと抵抗ありを比較すると,抵抗ありの方が静脈還流は有意に促進された. これまでの脳卒中後の上肢浮腫を改善する方策については,いずれも効果が制限されている.本研究は新しい方策として健側上肢の運動に着目した.本研究では健側運動によって患側の静脈還流が促進されることが明らかとなった.また,ハンドグリップについては抵抗があった方がより静脈還流が促進されることが明らかとなった. 今後は,本研究成果に基づいて,実際に健側運動によって患側の浮腫が軽減されるのか明らかにしていきたい.
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