本研究の課題は、「芸術の普遍性」、「歴史の現代性」という二つの概念に着目しつつ、ベネデット・クローチェの美学と歴史学の関係を検証することであった。『文芸批評』(1894)から『詩人の読解』(1950)に至るまでのクローチェ美学の変遷を検証し、クローチェが1)論文「芸術表現の全体性について」(1918)において「芸術の普遍性」という概念を確立させたこと、2)1912年の『美学入門』から通時的ではない新たな「歴史」を論じるようになったこと、の2点を明らかにした。さらに、クローチェ思想が同時代の歴史学に与えた影響について、我が国におけるクローチェの歴史思想の受容から考察した。
|