本研究の目的は、定期会員制度をもつサービスにおける収益性と顧客維持率との関係を明らかにすることにある。定期会員制度をもつサービスにおいて、その収益性は顧客維持率を高めるほど高まるという先行研究がある一方で、そうしたサービスにおいてさえ、その収益性は市場浸透度の影響を受けているという先行研究もある。一見対立する両先行研究は、少なくともクレジットカードにおいては矛盾がないことも明らかにされている。すなわち、その収益性は市場浸透度の影響を加味したディリクレモデルにより導かれる理論値から顧客維持率が正に乖離すればするほど高まると説明できる。ところが、このサービスと同様に定期会員制度をもつオーケストラの収益性はこのような乖離では十分に説明できない。これはなぜかを問うことが本研究の目的である。 三年計画の最終年度にあたる本年度は、オーケストラやプロスポーツの収益性が、クレジットカードとは異なり、顧客維持率の乖離では十分説明できないことを解くための分析方法を明らかにした。これは、収益と顧客維持率を市場に占める企業の数にまとめることにより、サンプル数が少数に限定されてしまうために生じた課題である。 少数サンプルであっても十分な妥当性をもつPLS-SEM(Partial Least Squares Structural Equation Modeling)を用いて、生命保険業であってもクレジットカードと同様の結果が生まれることを確認した。また、アンケートによるデータ収集とレシートによるデータ収集には大きな差がないことも明らかとなった。 以上の知見は、図書1冊、査読付き論文2本、学会報告2件にまとめられた。
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