• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2016 年度 実施状況報告書

構造情報を突破口とした 6 量体 ATPase の構造機能解析

研究課題

研究課題/領域番号 16K21472
研究機関京都産業大学

研究代表者

岸川 淳一  京都産業大学, 総合生命科学部, 研究助教 (80599241)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2018-03-31
キーワード6量体 ATPase / AAA+-ATPase / 回転分子モーター
研究実績の概要

AAA+-ATPase に代表される 6 量体 ATPase は、生体内の様々な生理現象に関わっており、その構造および機構を理解することは重要である。6 量体 ATPase の構造は共通しており、6つのプロトマーがリング状の複合体を形成し、機能を発揮する。この共通のコアとなる構造を理解することは、6量体 ATPase 全般を理解することに繋がる。本申請研究は、構造情報を突破口として、6 量体 ATPase の機構の理解を目指すものである。
現在、回転分子モーターである V1-ATPase の単粒子解析を進めている。V1-ATPase は、6 量体リング A3B3 に回転軸がささった構造をしている。単粒子解析では、A3B3 リングのみと、V1-ATPase 全体の両方を行っている。単粒子解析では、タンパク質分子を薄氷に包埋し、様々な角度から分子を撮影することが重要である。A3B3 リング、V1-ATPase ともに薄氷に包埋した際、同じ面を氷の表面に向けてしまい、様々な角度から分子を撮影することが困難であった。このタンパク質の向きの偏りを、タンパク質を氷に包埋する際にごく低濃度の界面活性剤を添加することで、一部解決できた。その結果、A3B3 リングの環状構造やその中に回転軸がささったV1-ATPase の構造が得られている。特に、V1-ATPase は現在~7オングストローム分解能の構造が得られており、今後、さらに単粒子画像を増やし、分解能を上げることを目指す。また、丁寧に構造のクラス分けを行い、中間体構造を明らかにしていく。
同じく6量体 ATPase であるべん毛タンパク質の FliI は、発現とATPase 活性は確認できているものの、安定性が低いため、解析が難しい。現在、安定性を向上させるために変異体の作成やドメインスワップによるキメラ複合体の構築を行っている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

6 量体 ATPase である V1-ATPase の単粒子解析による構造解析を行っている。V1-ATPase は、安定性も高く、最初のターゲットとして最適であると判断した。V1-ATPase の解析に用いた手法は他の6量体ATPase への適用も期待できる。
単粒子解析は、薄氷にタンパク質分子を包埋し、様々な角度から分子を撮影することで3次元構造を計算する手法である。V1-ATPase は、氷に包埋した際、同じ面を氷表面に向ける性質があり、様々な角度から撮影することが困難であった。氷に包埋する際に、ごく低濃度の界面活性剤を添加することで、この分子の向きの偏りを一部解消できた。その結果、A3B3 リング構造やその中心に刺さった回転軸の構造が~7オングストローム分解能で得られた。単粒子解析については、今後の道筋をたてられたと考えている。
同じく6量体ATPase であるべん毛タンパク質のFliI は、すでに発現系の構築は完了しており、そのATPase 活性も確認できた。電子顕微鏡撮影を行ったところ、明確な6量体のリング構造が確認できず、構造解析まで至っていない。非特異的な相互作用による、多量体の形成によるものと考えられたので、変異導入やドメインスワップによる6量体の安定化を図っている。現在、ドメインスワップによる単量体の発現は確認できている。また、次の6量体ATPase の候補として、せん毛タンパク質のPilF の発現系を構築中である。

今後の研究の推進方策

V1-ATPase の単粒子解析については、今後さらに電子顕微鏡像を撮影し、粒子数を増やすことで、より原子分解能の構造を得ることを目指す。また、撮影時に基質であるATP や阻害剤などを添加することで反応中間体の構造が得られる可能性がある。しかし、反応中間体は不安定で全単粒子にたいする割合は少ないと考えられるので、そのためにもより多くの電子顕微鏡像の撮影が必要であると考えている。さらに、V1-ATPase だけでなく、その活性中心である A3B3 リングについても単粒子解析を進め、V1-ATPase との比較から機能と構造の相関について議論を進める。
べん毛タンパク質のFliI については、今後も引き続き安定な6量体の発現・精製系の確立を目指す。ドメインスワップによる複合体の安定化を進めており、6量体 FliI が得られたら、生化学的解析および構造解析を行う。V1-ATPase の解析で得られた知見を用いて、FliI についても単粒子解析を進める。
FliI の安定的な発現・精製系の構築が難しい場合は、他の6量体ATPase をターゲットとして解析を進める。現在、せん毛タンパク質のPilF の発現系構築を行っている。この発現系が容易に確立できれば、このタンパク質の解析を優先に進める。
既に得られている V1-ATPase については、高速原子間力顕微鏡(HS-AFM)による解析も今後行う。FliI や PilF についても同様に精製系が確立でき次第、HS-AFM の解析に供する。HS-AFM により、1分子レベルでの構造変化を観察することで、反応に関わる速度定数などの情報を明らかにする。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] クライオ電子顕微鏡による液胞型 ATPase (VoV1) の構造解析2017

    • 著者名/発表者名
      岸川淳一、中西温子、横山謙
    • 雑誌名

      京都産業大学 総合学術研究所所報

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

  • [学会発表] Single particle analysis of V-type ATP synthase2017

    • 著者名/発表者名
      Jun-ichi Kishikawa, Atsuko Nakanishi, Kaoru Mitsuoka, Ken Yokoyama
    • 学会等名
      The 1st ABiS Symposium
    • 発表場所
      自然科学研究機構 岡崎コンファレンスセンター(愛知県・岡崎市)
    • 年月日
      2017-02-19 – 2017-02-20
  • [学会発表] 人工回転軸の設計とその回転2016

    • 著者名/発表者名
      岸川淳一
    • 学会等名
      第42回日本生体エネルギー研究会
    • 発表場所
      名古屋工業大学(愛知県・名古屋市)
    • 年月日
      2016-12-19 – 2016-12-21
  • [学会発表] 全身麻酔薬は細胞内ATPレベルを減少させる2016

    • 著者名/発表者名
      岸川淳一、井上勇奎、藤川誠、中西温子、今村博臣、横山謙
    • 学会等名
      第39回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県・横浜市)
    • 年月日
      2016-11-30 – 2016-12-02
  • [学会発表] De novo 設計軸の回転から明らかになったトルク発生機構2016

    • 著者名/発表者名
      岸川淳一、馬場みほ里、中西温子、横山謙
    • 学会等名
      第54回 日本生物物理学会年会
    • 発表場所
      つくば国際会議場(茨城県・つくば市)
    • 年月日
      2016-11-25 – 2016-11-27
    • 招待講演
  • [学会発表] The relationship between general anesthetic effects and ATP level in cells.2016

    • 著者名/発表者名
      Jun-ichi Kishikawa, Yuki Inoue, Atsuko Nakanishi, Makoto Fujikawa, Hiromi Imamura, Ken Yokoyama
    • 学会等名
      European Bioenergetics Conference 2016
    • 発表場所
      イタリア・リーヴァ・デル・ガルダ
    • 年月日
      2016-07-02 – 2016-07-07
  • [学会発表] De novo 設計人工軸の回転とそこから明らかになったトルク発生の仕組み2016

    • 著者名/発表者名
      岸川淳一、馬場みほ里、中西温子、横山謙
    • 学会等名
      第16回 日本蛋白質科学会年会
    • 発表場所
      福岡国際会議場(福岡県・福岡市)
    • 年月日
      2016-06-07 – 2016-06-09
    • 招待講演

URL: 

公開日: 2018-01-16  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi