研究課題/領域番号 |
16K21479
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研究機関 | 京都ノートルダム女子大学 |
研究代表者 |
杉村 美奈 京都ノートルダム女子大学, 人間文化学部, 講師 (20707286)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ラベル付与 / 付加詞 / ellipsis / 埋め込み文 |
研究実績の概要 |
今年度は、ラベル付与 (Chomsky 2013) を対象とした先行研究の整理及び、日本語と英語におけるラベル付与に関する言語事実を整理した。まずは、Chomsky (2013) のラベル付与アルゴリズムにおいて、2つの大きな課題となっている、語と語が併合した際のラベル付与、及び、句に付加詞が併合した際のラベル付与についての言語事実を整理し、語レベルでのラベル付与が義務的であることを確認した。その後、付加詞という句レベルでのラベル付与の義務性について、Hornstein and Nunes (2008), Hornstein (2012) 等の先行研究で既に指摘されている事実と照らし合わせながら、日本語と英語における言語事実の確認を引き続き行った。先行研究では、付加詞は、移動 (movement)、省略 (ellipsis)、 置換 (substitution) などの統語操作において、随意的及び義務的なラベル付与の両方を許容することが指摘されているが、新たな事実として、付加詞ラベル付与の随意性は統語環境、及び、言語によって異なることが明らかになった。既述の先行研究では研究対象とされていなかった、埋め込み文における省略現象に着目することにより、日本語の埋め込み文では付加詞を残した形での省略は主節のみ可能であり、埋め込み節においては不可能であるのに対し、英語では両方の節において可能であることが明らかになった。 この事実は、ラベル付与の随意性が主節と埋め込み節において異なることを主張する、Cecchetto and Donati (2015)の研究を一方では支持し、他方では言語間によって随意性は異なることを意味している。この事実を踏まえ、来年度は統語現象及び言語間の差異を考慮に入れた精密なラベル付与メカニズムの理論構築を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、当初計画していた現象記述研究の成果報告が一部出来なかったため、専門家からのフィードバックを十分に受けられなかった。言語現象の記述及び先行研究の整理に関しては、予定通り進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、平成28年度に新たに明らかになった言語事実をふまえ、付加詞におけるラベル付与メカニズムの理論構築を行う予定である。なお、28年度に現象記述研究の成果に対する専門家からの十分なフィードバックを受けられなかったことをふまえ、29年度は理論構築に先立ち、言語事実の確認と報告を専門家の協力のもとに行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度に予定していた学会及び研究会の参加に必要な旅費を一部来年度に回したことにより、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度の現象記述研究で明らかになった言語事実の整理及び理論構築に必要な文献、コンピュータ購入、ならびに学会、研究会参加のための旅費に使用する予定である。
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