研究課題/領域番号 |
16K21480
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
西村 陽子 東洋大学, 文学部, 准教授 (70455195)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 東洋史 / 考古学 / 地理学 / GIS |
研究実績の概要 |
平成29年度は、特に夏期に集中的に成果を挙げることができた。以下、遺跡踏査と資料収集に分けて記す。 [遺跡踏査]1.中国の新疆ウイグル自治区のトルファン地区において、前回(2012年)行った高昌故城調査の補足調査を行った。前回は高昌故城の悉皆調査を実施したが、その際遺跡東北隅にある寺院Vの調査が不十分なままになっていたため、再度現地に赴き、1902年に行われたドイツ=トルファン探険隊が残した遺構スケッチおよび平面図との照合に必要な資料を収集した。2.トルファン盆地のムルトゥク遺跡において、1902年から1904年の間にドイツ=トルファン探険隊が調査し、その後所在地が不明となっていたMurtuq III Anlage という遺跡を対象に、その所在地を確認し、ドイツ隊が撮影し、ベルリン国立アジア美術館が所蔵する当時の写真の景観との照合を行った。その結果、当該遺跡がドイツ隊が調査した重要遺跡であることが確定した。また、英国隊も調査しているため、英国の調査とも照合を行い、その相互関係を確定した上で、情報を現地文物局に提供した。 [資料収集]ウルムチ市にある新疆師範大学黄文弼特蔵館を訪問し、西北科学考察団(Sino-Swedish expedition)の中国側隊員である黄文弼が所蔵していた地図類を中心に調査を行った。その結果、所蔵されている地図の全貌を把握すると共に、黄文弼が所蔵していた地図の性質を明らかにする手がかりを得ることに成功し、黄文弼が1950年代に出版した地図と、Sino-Swedish expedition隊長であったSven Hedinが出版した地図の関係を解明することが可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各年次において、おおむね計画通りに推移しているだけでなく、調査活動においては、予想を上回る成果を挙げることができている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度においては、次のステップに向けて、最終目標である遺跡データベース作成に向けたデータを作成しつつ、引き続き古写真史料の調査および現地の遺跡調査を行う。 平成29年度に入手した黄文弼関連資料については、すでに黄文弼地図作成の経緯に繋がる重要情報である、ヘディン地図との関係を明らかにし得た。平成30年度は、特に地名に焦点を絞って二種類の地図の相互関係を明らかにする。 古写真調査に関しては、平成29年度に入手したドイツ隊撮影古写真の撮影場所の同定を行う。特に、クチャ地域、マラルバシ・トムシュクなど、これまで手つかずであった地域の写真を入手しているため、これらの地域に関する研究を推進する。また、これらの地域の現地調査も必要になってくるため、現地調査に向けた準備を行う。
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