研究課題/領域番号 |
16K21482
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
山西 良典 立命館大学, 情報理工学部, 講師 (50700522)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 歌詞検索 / クロスドメイン検索 / 音楽情報処理 / 情報推薦 |
研究実績の概要 |
本年度は,これまでに蓄積してきた歌詞検索に関わる知見や周辺技術をまとめて,歌詞検索システムを構築した.自然言語で記述された感想や評価が含まれる文を入力として,類似した歌詞を検索する.検索には,単語分散表現の類似度を利用するが,入力文についての単語分散表現の獲得において,入力文を歌詞として解釈することで異なるドメイン間での検索を実現した. 提案システムでは,観光地レビューを入力として歌詞を検索するクロスドメイン歌詞検索を実現した.観光地レビューには,観光地そのものの評価やレビュアーの感想などが記述されており,これらの特徴は歌詞における情景描写や感情表現に通ずるものがあると考えた.提案したアイデアでは,まず歌詞コーパスを基に,単語分散表現モデルを構築する.そして,観光地のレビューを歌詞コーパスによって構築された単語分散表現モデルを用いて単語分散表現ベクトルに変換する.一般的には,文書のベクトル化には,分析対象となる文書のドメインのコーパスを基にモデルを構築し,単語分散表現ベクトルを獲得するが,観光地レビューと歌詞の単語表現分散モデル化において,どちらも歌詞コーパスを用いて構築された単語分散表現モデルを共用することで,観光地レビューを歌詞として見做す.提案システムによって得られた検索結果を確認したところ,入力された観光地に対して出力された歌詞の内容には一定の傾向が見られ,観光地の特性を捉えたフレーズが含まれていることを確認した. ここまでの内容について,国内研究会1件を実施した.また,国際会議1件の発表を2020年3月に予定していたが,新型コロナウイルス流行に伴い,会議自体が延期となった.また,検索結果について客観的な評価を実施する予定でいたが,こちらも新型コロナウイルスの影響により評価実験の枠組みの再構成が必要となった.これらの不測の事態のため,研究期間を延長することとした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに蓄積した知見と習得してきた技術によって,提案システムのおおよその仕組みは完成したと言える.一方で,感性理解エンジンを最終目標として考えた場合,「入力情報からの感性の抽出」や「検索対象における注目領域」等を考慮して,歌詞検索において人間が直感的に適切と感じられれる検索結果を得られるための精度向上が必要と考えている.どのような改善により,人間の感性評価が向上するのかを考察することによって,人間の歌詞に対する感性を理解する道筋が明らかになると期待される. しかしながら,2020年の年始より,世界的に新型コロナウイルスの流行が始まり,想定していた評価実験や,評価実験の結果に基づくシステムの改修が実現できなかった.また,国際会議での発表を通して,国際的な研究成果の発信や研究成果に対するフィードバックを得る予定でいたが,これも延期となってしまった.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,現状の提案システムの評価実験を実施すると共に,検索機構において以下の改修を検討する. 入力情報の要約:歌詞検索において入力される情報を要約して,重要部分だけを検索クエリとして用いる.要約によって,現在は頻度が高い単語(例えば観光地の土地名など)に対する平滑化が期待され,より人間が観光地と歌詞を結びつける際の解釈に近い検索結果が得られることが期待される. 検索対象の事前クラスタリング:歌詞そのものにも様々なニュアンスが存在している.どのようなニュアンスが検索結果として感性的に適合するのかは,入力情報のみならずユーザの嗜好による部分も大きい.そこで,検索対象となる歌詞について,あらかじめクラスタリングを実施する.クラスタ毎に入力の観光地レビューに類似した歌詞を検索することで,個々のユーザの嗜好に適応した歌詞検索の実現を図る.
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に国際会議での発表を予定していたが,新型コロナウイルス流行に伴って会議が延期された.また,提案システムの評価実験についても,実験の枠組みを再考する必要が発生し,実験実施自体も延期せざるを得ない状況になった.このため,国際会議への参加にかかる旅費,参加費,および,実験実施者・参加者への謝金について次年度使用額が発生した. 残額については,延期となった会議での発表,および,実施を延期していた評価実験について枠組みを再考した上で実施し,その発表費と謝金として用いる予定である.
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