研究課題/領域番号 |
16K21487
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
小菅 竜介 立命館大学, 経営管理研究科, 准教授 (80755471)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 顧客経験志向 / 顧客志向 / 市場志向 / 制度的同型化 / 経営者の役割 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、 優れた顧客経験を創造する組織能力を「顧客経験志向」として概念化し、定量データ・定性データにもとづくケーススタディにより、その構築メカニズムを明らかにすることである。これは研究代表者が行ってきた市場志向の構築に関する研究の発展版として位置づけられる。研究初年度である2016年度は、基本的論点を整理するために、自動車ディーラー企業における市場志向の構築について考察を行った。その結果、主な業績として、英文論文2編を完成させた。概要は以下の通りである。第一に、ほとんどの店舗が市場志向の受容に苦労する中、経営者がごく少数の店舗に芽生えた市場志向の形態に注目し、管理者の登用と評価報奨制度の改訂を通じてそれを全体へ普及させていった現象を記述し、これを制度的同型化の観点から考察し、論文にまとめた。第二に、以上のケースから得られた発見の一つと、既存文献にもとづいて、「市場志向は改善につながる」という仮説の検証を行い、論文にまとめた。具体的には、「改善レディネス」という構成概念を提示し、尺度化した上で、当該自動車ディーラー企業の51店舗の全営業パーソンの回答を用いて市場志向との関係性を調べた。それぞれの変数を中央値で低群・高群に分け、2×2のクロス表を作成し、分析したところ、仮説は支持された。一方、さらなる分析からは、旧来の属人的な営業で十分な売上を達成できているような店舗は、改善は触発されても、市場志向を受容できていないことが明らかになった。この結果を受け、だからこそ市場志向の構築においては、経営による人為選択が基本的な課題であることを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
定性データのコーディングにやや手間どっているため。ただし、調査対象企業の協力により、データ収集自体は円滑に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
当初、「顧客経験志向」という概念の分析単位として集団(店舗、部署)をとらえていたが、フィールド調査を通じ、個人も重視すべきことが示唆された。定性データの分析から分析単位の明確化を行った上で、仮説を導出し、仮説検証(および事例発見)のための質問票調査を設計する。なお、質問票調査の実施については既に調査対象企業から合意を得ている。また、本研究から「顧客経験へのフォーカスが組織間関係に与える影響」に関する国際共同研究が派生する見込みであり、こちらも同時並行的に進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗状況に合わせて予算の執行計画を調整したことに伴うものである。
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次年度使用額の使用計画 |
フィールド調査のための旅費、国際学会発表のための旅費・参加費、文献購入費、インタビューのテープ起こしのための経費として使用する予定である。
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