研究課題/領域番号 |
16K21490
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
金 成恩 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 研究員 (00723884)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 子どもの出自を知る権利 / 親子関係 / 面会交流 / 提供者の尊厳 / 養育環境の安定化 / 法と心理の協働 |
研究実績の概要 |
今年度は、子の権利と養育環境の安定化を図る法制度の構築を中心に研究し、それを国内・国外の学会やシンポジウムで発表を行った。今年度の補助金は、主に上記の研究を遂行するための文献の購入費に当てられた。
1.子の権利と養育環境の安定化を図る法制度の構築の研究については、未成年者の子の養育環境、とくに親権・養育費・面会交流をめぐる紛争、解決方案及び立法提案を日本「法と心理学会」、「東アジア法心理国際シンポジウム」などで発表を行った。生殖医療技術を用いて家族を形成することを保障するためには、前提として養育環境の安定化を図る法整備がなされるべきであるから、28年度は、日本の面会交流と養育費関連法制度の問題点と課題を指摘し、韓国、台湾との比較法研究を含め,調査及び研究を行い、立法提案を提示した。なお、この研究を遂行するにあたって、補助金を用いて関連文献(辞書類を含む)を多数購入した。
2.平成28年度から、生殖補助医療にかかわる課題の抽出と問題意識を共有化する「生殖補助医療と家族形成研究会」を定期的に開催してきた。研究会のメンバーとしては、医学から藤田、臨床社会学・臨床心理学から中村、荒木、家族社会学から野辺、三部、南貴子、由井、法学から金、梅澤、二宮、当事者から松本、参加している。参加者はそれぞれの視点から意見を述べ、討議を行い、これらを受けて課題を深めていた。なお、補助金を用いて生殖補助医療に直接かかわっている中塚医学者を招聘し、講演を開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.問題と課題の析出について:平成28年度から、生殖補助医療にかかわる課題の抽出と問題意識を共有化する「生殖補助医療と家族形成研究会」を、総7回にかけて開催してきた。研究会のメンバーとしては、提供型生殖医療技術の利用拡大に慎重な立場のメンバーもいる。そうしたメンバーも含め、研究会の参加者はそれぞれの視点から意見を述べ、討議を行い、これらを受けて課題を深めていた。それぞれ異なる意見のなか、共通している問題と課題の内容は、「生まれてくる、またはすでに生まれた子どもの権利保障」とことであった。具体的には、「子どもの出自を知る権利が認めること」と「提供者の尊厳の確保」が大事であり、それらの保障のためには、立法のみならず、専門家(医療、法、臨床心理など)及び機関(児童相談所等を含む行政機関)が、どのように連携していくのか、が課題であると明らかになった。
2.当事者の語りの収集及び支援団体のインタビュー調査について:生殖心理カウンセラーである荒木(生殖補助医療と家族形成研究会のメンバー)の協力を得て「島根モデル」の関連関係者のインタビュー調査を行う予定だったが、日程があわず、実施されなかった。これについては、日程再調整を通じて、次年度に行う予定である。その代わりに、1の課題である「子どもの知る権利」について、「両親から出自の事実の告知が、親子関係の親密感と信頼関係を築くのに、重要である」ことが欧米諸国では共通理解となっているに対し、日本ではどのくらい理解されているのかを調査するため、一般市民を対象にして、インタ-ネット調査を依頼した。データの分析を通じて、親子関係の成立と養育環境の安定化にどんな制度が設けるべきなのかを考察し、その分析の発表を5月末からベルギー開かれるEAPL2017で採択された。
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今後の研究の推進方策 |
1.インタビュー調査:28年度できなかった「島根モデル」を調査する。現在、「島根モデル」を構築し、生殖医療施設・児童相談所・乳児院・島根県行政の共同で、不妊カップルと社会的養護下にある子どもの縁を取り結んでいる。その仕組みは、『<カップル>と<こども>をつなぐファミリー・aimパスポートと家族のサポート・ガイドブックin 島根』(2013)で当事者向けに分かりやすく解説されている。2013年には関係機関の拡大と汎化を目指す連絡協議会も発足した。そこで島根の現地調査も行い、島根モデルを具体例に、専門家・機関の連携の手法を検討する。
2.海外フィールドスタディ:本研究テーマに関して先進的な対応をしているイギリス、ベルギーと卵子提供・代理懐胎に慎重、抑制的なドイツを、それぞれの事情と医療、当事者、法制度の相互関連を調査する。
3.成果報告:1と2の調査を分析し、2017年10月「日本法と心理学会」と12月「東アジア法心理国際シンポジウム」などで発表し、発表したものを論文化させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定であった「島根モデル」関連支援団体のインタビュー調査が遅れたため。
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次年度使用額の使用計画 |
日程再調整を通じて、次年度、9月頃にインタビュー調査を行う。
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