研究課題/領域番号 |
16K21494
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
西谷 功 龍谷大学, 仏教文化研究所, 研究員 (80773928)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 泉涌寺 / 南宋仏教 / 儀礼 / 金光明懺法 / 諸天 / 出山釈迦 / 草坐釈迦 / 自恣 |
研究実績の概要 |
本研究は、鎌倉時代の寺院社会において、入宋僧が請来した宋代仏教儀礼を取り上げる。なかでも、A.盂蘭盆や忌日などの追善・回向儀礼、B.祖師忌・開山忌儀礼、C.授戒儀礼、D.布薩・安居・自恣儀礼の4つの儀礼を中心に、その儀礼に用いられる文物(仏像、仏画)やその儀礼内容がいかなるものかを明らかにするものである。 本年度は、鎌倉時代にこうした儀式が導入される背景を考察するために、まず、入宋僧俊ジョウ(1166-1127)の行状書「不可棄法師伝」(寛永本、泉涌寺蔵)の再翻刻を行い、本研究遂行の基礎資料とした。そして俊ジョウ請来とされる宋式仏教儀礼のなかで、A.に関連する、金光明懺法儀礼の儀礼次第書の調査(泉涌寺、東京大学史料編纂所など)、および現行の儀礼(泉涌寺修正会)の実態調査、その儀礼の地域的展開の一例として愛媛県石手寺の「諸天図」調査および繁多寺などのフィールドワークを行った。俊ジョウ請来とされる宋式「金光明懺法」は現行の儀礼次第や現存遺例に即せば、その弟子たちによって整理されたものと判断でき、そうした弟子たちの活動のなかで泉涌寺をはじめ、三聖寺、繁多寺などで実践されていたことが想定可能となった。 また、儀礼次第書などを調査するなかで、D.安居・自恣儀礼で使用される釈迦如来像の図像が、仏伝中にみえる釈迦が悟りを開く「成道」場面に前後する、草座に坐して瞑想する「草坐釈迦」、成道後に衆生を教導するために山を下りる「出山釈迦」の図像と関連することがあきらかとなり、作例調査を行った(泉涌寺、来迎院、個人蔵ほか)。 こうした成果を踏まえて、大津市歴史博物館、奈良国立博物館、金沢文庫、京都国立博物館で講座を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、A.追善・回向儀礼とB.祖師忌・開山忌儀礼を中心に行う予定だったが、調査を実施するなかで、D.安居・自恣儀礼に関連する資料に恵まれたため、D.の考察を進めた。予定する調査の順序が変わったが、調査全体としてはおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の調査成果を学会発表や論文などで開示し、さらに研究者と意見交換などを行うことで、新たな類例の情報を入手し、考察を深めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度で予定している海外調査(中国、韓国)、それにともなう人件費・謝金が想定されるため、今年度は、関西圏の調査を重点的に行い、旅費を押さえた。
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次年度使用額の使用計画 |
海外調査(中国、韓国)を予定しており、その調査を円滑に行うため、研究者または大学院生の協力を必要とする。その旅費および人件費に使用する予定である。
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