研究課題/領域番号 |
16K21497
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
大谷 由香 龍谷大学, 文学部, 准教授 (50727881)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 泉涌寺 / 戒律 / 国際交流 / 俊ジョウ |
研究実績の概要 |
研究計画の最終年度にあたるので、研究報告や講演会などを積極的に行った。合わせて鎌倉期における日中の戒律思想の交流が日本仏教にどのような影響を与えたのかについて研究を進め、新出資料の紹介を行った。 南都の布薩儀式が泉涌寺俊ジョウの帰国後に復興されたものであったことを明らかにし、その研究成果に基づいて泉涌寺・唐招提寺において三度にわたり布薩の講義を行った。現在はほぼ伝わらない儀式作法であるが、自身の研究成果を通じて再興が検討されている。また考古学・国文学・歴史学が主体である学会・研究会にてそれぞれ報告を行った。仏教学における研究成果が社会や他分野研究に還元できつつあると感じている。 研究成果の一部は台湾の国際学会で報告し、龍谷大学で行われた日中韓国際華厳学シンポジウムでも報告を行った。これにより研究成果を海外にも発信できたと自負している。 一方で研究を進める中、俊ジョウなどが鎌倉期に中国から最先端の仏教学を紹介する一方で、旧来仏教においては同時代的に中国の教学を積極的に受け容れる姿勢が見られず、かえって隋唐新羅仏教の復興と活用がさかんに行われるようになっていたことが明らかになった。この姿勢は国文学や美術にも通じるものである可能性を指摘できる。 また東京大学史料編纂所との共同研究において検出した泉涌寺塔頭の新善光寺所蔵の『釈門帰敬儀科釈』の翻刻紹介を行った。これは俊ジョウが留学中に交流したと考えられる宋僧了然の著作であり、これまで発見・報告されてこなかった新出資料である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究そのものは順調に進んでおり、当初の計画通りに進んでいる。ただし予定していた新出資料翻刻報告が報告媒体の少なさもあって進んでいない。また来年度に韓国・アメリカで行われる計3つの国際学会で報告を予定しているため、研究期間を延長した。
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今後の研究の推進方策 |
韓国・アメリカで行われる計3つの国際学会で報告を予定している。しかし2020年5月12日現在、韓国での国際学会はいずれも新型コロナウィルスの流行拡大のため来年度に延期が決定した。海外報告出張がなくなった分、今年度は新出資料の翻刻報告を中心に研究を進めて行きたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果の国際的な波及を狙い、来年度に韓国・アメリカで行われる計3つの国際学会で報告を予定し、研究期間を延長した。しかし2020年5月12日時点で韓国で行われる2つの国際学会は来年度に延期が決定している。 このため、研究計画のうち遅滞している新出文献の翻刻と報告のために使用する予定である。
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