研究課題
自然発症性の本態性振戦モデルであるTremorラットは、aspartoacylase遺伝子の欠損を有しており、aspartoacylaseは振戦発現の原因遺伝子の一つとして報告されている。本年度は、新たに作出したaspartoacylase遺伝子欠損(Aspa-KO)ラットを用いて、Aspa-KOラットの脳内モノアミン含量の定量を行い、昨年度に実施したTremorラットの定量結果と比較した。また、各種振戦誘発剤を用いて、Aspa-KOラットの振戦発現の感受性評価を行った。・Aspa-KOラットおよびF344ラット(起源動物)の全脳9部位における脳内モノアミン含量を定量した結果、視床下部および下オリーブ核におけるserotonin(5-HT)含量の上昇が認められた。さらに、ほとんどの脳部位において、5-HT代謝体である5-HIAA含量および5-HT代謝回転(5-HIAA/5-HT)の上昇が確認された。一方、dopamineはほとんどの脳部位で大きな変動は認められなかった。これら結果より、特に下オリーブ核における5-HT合成および5-HT代謝回転の亢進が、本態性振戦の発現に影響を及ぼすことが示唆された。・無処置のAspa-KOラットは自発的な振戦発現を示さなかった。薬剤性振戦による評価では、harmaline(本態性振戦)あるいはoxotremorine(パーキンソン病振戦)を用いて、Aspa-KOラットおよびF344ラットにおける振戦発現の感受性評価を行った。その結果、harmaline誘発振戦に対して、Aspa-KOラットはF344ラットと比較して振戦発現の増強傾向を示した。一方、oxotremorine誘発振戦に対しては、Aspa-KOによる影響はほぼ認められず、Aspa-KOは本態性振戦の発現に対して、特異的に影響を及ぼすことが考えられた。
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