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2016 年度 実施状況報告書

発達障害の療育実践家の熟達化に関する認知科学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 16K21502
研究機関追手門学院大学

研究代表者

長岡 千賀  追手門学院大学, 経営学部, 准教授 (00609779)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード作業療法 / 発達障害 / 遊び / 相互作用 / 熟達化 / 心理学 / 教育 / 保育
研究実績の概要

発達障害を持つ子どもの療育の1つに作業療法がある.作業療法のセラピストと子どもの間に生じる良質な関わりには,子どもが新しい環境で主体的に考え適応的に環境や他者に関わる能力を引き出す働きがある.しかし,その関わりの質はセラピストの技量によって異なる.また,関わりについて科学的検証がほとんどなされていないのが現状である.そこで本研究は,セラピストの経験年数にともなって,セラピスト-子ども間の関わり方がどのように変化するか,さらに,熟達したセラピストの関わり方にはいかなる特徴があるかを定量的分析により明らかにすることを目的とする.ここで得られる成果は,認知科学における熟達化理論の構築に加え,教育や保育,作業療法等の療育の質の向上に貢献出来ると考えられる.
本研究の課題は大きく2つある.第一は,セラピストとしての経験年数による,関わり方の変化の解明である.特に注目する点は,子どもが課題の解決法を見出すに至るまでに,セラピストによっていかなる言葉がけがなされたか,及び,いかなる物理的サポートがなされたか/なされなかったかである.これらが,作業療法の初心者,中堅者,熟達者の間で異なるか否か,さらにどのように異なるかを明らかにする.本研究が特に注目する点は,子どもが新しい環境で主体的に考え,適応的に環境や他者に関わるための基盤となるものと言える.
第二の課題は,セラピストとしての経験年数による,関わりプランニング過程の変化の解明である.セラピストが,子どもを理解しその時々の関わりをプランニングするために,いかなる情報に焦点をおくかに着目し,これが,作業療法の初心者,中堅者,熟達者の間で異なるか否か,さらにどのように異なるかを明らかにする.心理療法のセラピストと同様と考えるなら,子どもを理解するために何に焦点を置くかが経験年数によって異なる.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初予定では,作業療法の実際のセッションをビデオ撮影し,セラピストとクライエントの関わりにおける言語・非言語情報を定量的に分析する予定であり,実際にそれを行なった.
平成28年度には,まず,日常的会話において支障のない言語的コミュニケーション能力を有する子どもの作業療法のセッションを分析した.イベントセグメンテーション法を援用し,子どもの失敗(問題発生)と子どもによる解決法発見に至るまでの流れを記録した.この流れをセラピストの言葉がけと対応付けながら,セラピストの役割を考察した.
加えて,言語能力が低い子どもの作業療法のセッションの予備的分析に着手した.当初予定ではこうした分析を想定していなかったが,分析することにより,セラピストの役割についての深い示唆を与えてくれる重要な知見を見出しつつある.これらの成果を,平成29年度に国際会議1件,国内の研究会1件,ほかで報告する計画をたてている.
以上から,おおむね順調に進んでいると判断している.

今後の研究の推進方策

上記の,言語能力が低い子どもの作業療法のセッションを題材とした予備的分析では,言語的コミュニケーション能力を有する子どものセッションの分析とは異なり,対人距離と接触行動を指標とした.これは,子どもの性質の相違のため,セラピストの関わり方も異なると予測されたためである.指標となった対人距離と接触行動は,社会心理学の分野で理論の蓄積がある.また,分析から,熟達者の関わりの技法に関わる知見が得られつつある.他の事例や他の観点からの分析結果と総合することにより,本研究の第一の課題を十分に達成することができると考えている.そのため平成29年度には,言語的コミュニケーション能力を有する子どものセッションにおけるセラピストの関わりの特徴を明らかにする計画である.

次年度使用額が生じた理由

まず,人件費・謝金が今年度は予定よりも大幅に抑えられた.この理由は,データ収集に関わる作業療法士等に向けた謝金が必要であると考えていたが,実際には,ボランティアで協力してくださったためである.また,データ分析に関わる謝金が必要と見積もっていたが,今年度の予備的分析のためには,分析手法の開発から始める必要があったため,データ分析を依頼することを控えた.
また,学会発表や学会参加によって情報収集することを計画していたが,参加した国際会議が国内で開催されたこと,および他の業務との兼ね合いで学会参加が少なかったことが理由で,経費は計画よりも少なく済んだ.物品費についても,データ収集先の施設のビデオカメラ等を使用することになったため,今年度は不要であった.

次年度使用額の使用計画

データ収集や分析に際して今後設備備品が必要と考えている.また,データ収集・分析に関わる人件費や謝金は,当初予定よりも余裕があると見て,今後,より効果的にデータ収集・分析を進める予定である.また,それに伴い活発な研究成果の公開に向けて旅費,謝金等を必要とする.

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] 子どもの発達障害と作業療法2017

    • 著者名/発表者名
      長岡千賀
    • 雑誌名

      こころの未来

      巻: 17 ページ: 58-58

    • オープンアクセス
  • [学会発表] Therapist-Child Interaction: A Preliminary Study of Occupational Therapy using Quantitative Analysis2016

    • 著者名/発表者名
      Nagaoka, C., Matsushima, K., Yoshikawa, S., Kato, T.
    • 学会等名
      The 31st International Congress of Psychology (ICP2016)
    • 発表場所
      Yokohama
    • 年月日
      2016-08-27 – 2016-08-27
    • 国際学会
  • [学会発表] 子どもの主体性の発達を支えるセラピストの言葉がけ2016

    • 著者名/発表者名
      長岡千賀
    • 学会等名
      感覚統合学会FD研修会
    • 発表場所
      心身障害児総合医療療育センター
    • 年月日
      2016-04-24 – 2016-04-24
    • 招待講演

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公開日: 2018-01-16  

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