昨年度に引き続き、マオリ語復興における、テ・アタアランギ(成人へのマオリ語教育)教授法の成立過程、またマオリ語公用語化や、コーハンガ・レオ(保育園)、クラ・カウパパ・マオリ(マオリ語イマージョン学校)、テ・ワーナンガ(マオリ大学)の設立過程と現状を明らかにするため、文献研究と現地調査を行なった。コミュニティにおけるマオリ語教育の現場は、新マオリ語法(テ・トゥレ・モー・テ・レオ・マオリ)の成立により、新しい展開を見せ始めている。各地域や重要セクターから選ばれたマオリ語有識者が委員会(テ・マーターワイ)をつくり、コミュニティの言語復興への取り組みを支援するが、さらにその有識者が各地で個別の委員会を作り、各地のマオリ語復興実践者たちから応募された取り組みを議論し、テ・マーターワイ全体の承認の下に、資金を提供する。新法は、マオリ語復興に関して、マオリ語復興実践者たち自身が、その予算配分を決めるという画期的な取り組みで、コミュニティの言語教育、とりわけ成人へのマオリ語教育に大きな影響を与えるものであり、アイヌ語復興への示唆も多いと考えられる。さらにマオリ語保育園やマオリ語イマージョン学校も、自校の理念に合った教育を行うことを念頭に置き、例えばコーハンガ・レオ財団から独立した保育園が増えたり、部族の方言や歴史、文化を中心に教育を行う学校が増えているなど、独自の教育を行おうとする動きが増えてきていることが明らかになった。
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