本研究は、希少な若年層の生産性を効率的に向上させる中等高等教育段階における職業教育の在り方を模索することを目的に、既存研究の精査、独自調査を用いた実証分析を通して、個人の職業教育・普通教育の経験やその内容(分野、実習などの講義形式)の差異が、中長期的な就業状況(就業率、賃金等)に与える影響を検証する。 さらに、その教育効果について、世代間の差違、世代を経た変遷を考察することで、現代に適した効率的な学校職業教育の設計に、何らかの政策的知見をもたらすことを目指す。 また、国際的な教育施策やその成果研究との比較を行う。 平成30年度は、分析の主たるデータとなる、1950年代生まれから1990年代生まれに渡る三世代コホート計4000名を対象に、個人の教育歴、その他属性、現在までの就業状況(就業継続年数、賃金、職場環境など)等を調べるインターネット調査を実施した。現在までに主要な仮説に係る統計的分析(世代間の教育内容の差異及びその賃金や就業状況への影響の推計など)を進めるとともに、その結果を国内外の既存研究における知見と照らし考察を進めている。また、年長の世代の教育歴(高校学科、大学進学率等)等に全国平均からの乖離(サンプルセレクションバイアス)が観察されたため、より適正な補正手法を模索している。 また、上記データを用いた研究以外には、民間の既存調査から2000年代後半から2010年代前半に渡る企業単位のミクロパネルデータを構築し、これを用いた計量分析を通して、世代間の労働代替性を考察した研究論文の執筆(国内査読誌での掲載決定)、アクティブラーニングの教育効果に関するサーベイ論文などをまとめた。
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