新型コロナウィルス感染拡大の影響で、一般の被験者を対象とした実空間における歩行実験は実現できなかったが計画を変更して次の研究を実施した。 1)広域展開に必要な歩行経路選択要素の自動抽出を試みた。都市景観画像を用いてセマンティックセグメンテーションを行い、一部の歩行経路選択要素を自動抽出できることを確認し、既存データセットの活用と写真撮影における課題を明らかにした。 2)非接触型の歩行実験手法を検討した。新型コロナウィルス感染拡大により、実験者が被験者に付き添って歩行実験することが困難となった。そこでタブレットのビデオ通話機能を用いた歩行実験手法を検討して、遠隔によるファシリテートを試行した。その結果、遠隔でも詳細な歩行実験データを記録でき、新たな歩行実験手法の有効性を明らかにした。 3)歩行実験の代替手法として、全天球画像を用いたVR歩行実験手法を構築した。前年度に屋内空間を対象に作成したVR歩行実験プログラムを屋外空間に使えるように改修し、さらに自然な歩行感覚を得るための全天球画像の適切な撮影間隔、撮影方法を調査した。 4)大学キャンパスの屋外経路を対象として、学生15名に車椅子利用時と非利用時における経路選択の違いと走行困難度に関わる要素を調査した。その結果、階段や道路鋲などの段差、急な縦勾配や長い横勾配、路面のきめ深さ(芝生・石畳・タイル)など、主に地面に起因する要素が挙げられた。車椅子利用者の最適経路を広域調査するためには、レーザースキャナーなどを用いて地面の状況を高精度で取得する手法が有効と考えられる。
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