研究課題/領域番号 |
16K21514
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
西川 浩平 摂南大学, 経済学部, 准教授 (60463204)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 市場拡大再算定 / 薬価 / 高血圧症 / イノベーション |
研究実績の概要 |
我が国の薬価制度において、在り方も含めて議論されている市場拡大再算定の影響を評価するに当たり、昨年度は2007年度から2008年度にかけての降圧剤市場を対象とした医薬品レベルのデータセットを作成した。しかし、一部の降圧剤においてレセプトデータ上の医薬品のIDと薬価データベース上の医薬品のIDに不一致が見つかったため、データセットの再整備を行った。 データセットの修正後、降圧剤市場における需要関数の推定および推定モデルの修正を行い、シミュレーションに用いるモデルを確定した。需要関数の推定を通じ、降圧剤市場における需要の価格弾力性は0.3程度であることが明らかとなった。加えて、医師の降圧剤の選択においては作用機序が重要で、作用機序内での代替性が強いことを示す結果も得られた。これらは市場拡大再算定に指定されることで、当該降圧剤から得られる売上高が減少することを示唆する。その他、降圧剤の普及における販売後の経過年数、パッケージの多様性、服用回数の重要性など、先行研究と整合的な結果も得られた。 需要関数の推定結果に基づき、次年度は同制度の市場への影響を定量的に評価するためのシミュレーションを進めていく予定だが、その際に課題となるのは、市場拡大再算定に指定された降圧剤の指定されなかった時の薬価の扱いである。この点については、次の2つの仮想的な薬価を用いることで対応する。第1は市場拡大再算定に指定されなかった降圧剤の平均的な薬価変化率を適用させる。第2は、ヘドニック法を用いて、当該降圧剤が同制度に指定されなかったとする薬価の予測値を試算し、この薬価を適用させる。後者のヘドニック法を行うためには追加的なデータが必要となるため、その整備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在のところ降圧剤市場を対象とした論文を2本執筆し、シミュレーションを含む最終的な分析も進行中である。進行中の分析についても、平成30年度中には研究成果をまとめ、学術誌への投稿が可能と思われる。これら論文によって当初予定していた研究計画通りに進んでいると考える。
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今後の研究の推進方策 |
ヘドニック法による薬価の予測値の計算を行い、シミュレーションを通じて市場拡大再算定が市場に及ぼした影響を評価する。シミュレーションによる評価を踏まえた最終的な分析結果を論文として取りまとめ、学術誌に投稿する予定である。 これと並行して国内外の研究会や学会での意見交換の結果を適宜反映させる。
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