昨年度は、5週齢のWistarラットを用い、癌悪液質モデルラットに対してトレッドミルによる低強度および中強度全身運動を実施することで、癌悪液質による筋量減少に対する抑制効果およびマイオカインの変化を解析した。腹腔内投与してから9日間の全身運動を実施後、下腿後面の骨格筋および血液を摘出した。摘出した組織からELISAにより各種サイトカインとマイオカインおよびWestern blot法やRT-PCR法により筋タンパク質分解・合成系因子を解析し、それらを指標として各運動強度による運動効果の判定を行った。筋量に関しては、癌悪液質により筋量減少が惹起された。低強度運動により、筋量減少の抑制効果が認められた。筋タンパク質分解系の変化は筋特異的ユビキチンリガーゼ(Atrogin-1、MuRF1)を指標とした。その結果、悪液質により各指標は有意に増加しており、筋タンパク質分解系が筋量減少に関連していることが示唆された。一方で、低強度運動により各指標に対する抑制効果を示した。筋タンパク質合成系は、p70S6Kのリン酸化を指標とした。その結果、悪液質により有意な低下を示し、筋量減少に関連していることが示唆された。一方で、低強度運動によりp70S6Kリン酸化低下の抑制効果を示した。以上の結果から、癌悪液質による筋量減少には筋タンパク質分解系の亢進および筋タンパク質合成系の活性低下が関与していることが示唆された。一方で、低強度運動により筋タンパク質分解系の亢進抑制および筋タンパク質合成系の活性低下に対する抑制効果を示したことから、全身運動は癌悪液質に伴う筋量減少の抑制に効果的であること示唆された。一方で、中強度運動においては、癌悪液質による筋量減少の予防効果が見られないだけでなく、生存期間が低強度運動に比較して短くなっていた。 上記結果から、本実験は計画通り終了したと考える。
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