現在、Duchenne型型筋ジストロフィー(DMD)に対し、ジストロフィン遺伝子のスプライシング促進配列(Exonic splicing enhancer: ESE)に対するアンチセンスオリゴヌクレオ チド(AS-oligo)によりエクソンスキッピングを誘導する治療法の開発が世界各地で行われており、その一部は臨床応用されている。しかし、DMDでみられる遺伝子変異は多彩であり、症例ごとにスキッピングを誘導する標的エクソンが異なる。そのため、多くの症例に本治療を適応するためには、ジストロフィン遺伝子内の多くの領域においてスプライシングを制御し得る塩基配列を同定する必要がある。平成31年度は、前年度に引き続きMLPA法によって欠失・重複変異が同定されなかった筋ジストロフィーの症例に対し、直接塩基配列解析法あるいは次世代シー クエンサーにより点変異、1ないし数塩基の欠失・重複変異などの微小変異の同定を行い、これらの症例におけるスプライシング型の解析を行った。この解析により、微小変異がスプライシングに及ぼす影響を明らかにできた。また、一部の症例において6型コラーゲン遺伝子同一アリル内の近接した2か所の変異を持つことで、3種類のmRNAが発現することを見いだした。これらの結果より、スプライシングに影響を及ぼすゲノム上の配列を明らかにすることが可能と考えられる。
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