財市場競争がマクロ経済に及ぼす影響を分析した。財市場の競争の激化は経済成長率を高めるが、財市場の競争が激しすぎると経済成長率は低下する。財市場競争と経済成長率の間の逆U字の関係を導出できる。それは、Nash交渉積を最大化する労使交渉モデルを、研究開発に基づく内生的成長モデルに導入することによって可能となる。 賃金だけを労使交渉によって決めるRight to Manage 方式は、賃金と雇用を労使交渉によって決める効率的交渉方式のケースと比べると、経済成長率を最大化させる財市場競争度合いは高い。望ましい経済成長戦略は何かを考えることが重要である。経済成長率を高めるためには、望ましい労使交渉の形態を選択すること。財市場の独占度が高すぎる場合は、財市場を競争的にすることによって、経済成長率を高めることが可能となる。 財市場競争が経済成長率に及ぼす効果が分析された。財市場競争はマークアップを低下させ、独占利潤の低下は研究開発のインセンティヴを弱める一方、財市場競争によるマークアップの低下が失業給付(留保賃金)と賃金を高め、失業率を低下させる。雇用率が高まるので、製造業だけでなく研究開発部門への労働投入が増加する。財市場競争と経済成長率の間の逆U字の関係を導出できた。つまり、経済成長率を最大化するような望ましい財市場の競争度合いが存在することを指摘している。財市場と労働市場の不完全性を考慮したモデル構築とその検証は、今後も重要な研究課題である。
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