日中の眠気は代表的な月経前の一つであり、高体温が維持されることによる睡眠の質の低下が影響していると考えられる。本研究の目的は、異なる機序で熱放散を促進することが示唆されている全身浴および睡眠中の頭部冷罨法が月経前にある女性の夜間体温と睡眠の質に及ぼす影響について検証することである。昨年度は全身浴および頭部冷罨法が睡眠脳波および主観的睡眠感に及ぼす影響について検討した。その結果、睡眠中の頭部冷罨法が中途覚醒を減少させるなど黄体期の睡眠の質の改善に有用であることが示唆された。 これまでの研究結果を踏まえ、今年度は黄体期の頭部冷罨法が日中の眠気や注意力に及ぼす影響について検討を行った。黄体期に眠気が繰り返し増強する女子大学生を研究対象者とし、温度調整可能な循環式冷却シートを用いて25℃で睡眠中に頭部を冷却した。なお、対象条件の温度は35℃に設定し、2群間で平均値の比較を行った。主観的な眠気の評価には日本語版カロリンスカ睡眠調査票(KSS-J)を用い、客観的な評価にはPsychomotor vigilance task(PVT)の平均反応速度を用いた。その結果、KSS-Jの平均得点については2群間に有意な差は認められなかったが、PVTの反応速度は頭部冷罨法群で有意に高く、睡眠中の頭部冷罨法によって日中の眠気が改善される可能性が示された。 本研究で得られた成果は、黄体期の眠気に苦しむ女性の睡眠の質ならびに日中の眠気の改善を目的としたセルフケア法を開発する上で基礎的な知見を提示するものである。今後は頭部の冷却がどのような機序で睡眠脳波に影響を及ぼすのか検討していくとともに、さらに効果的な寝床条件を探索していくなど本研究をもとに発展させていく予定である。
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