研究課題/領域番号 |
16K21528
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研究機関 | 京都外国語大学 |
研究代表者 |
伊多波 宗周 京都外国語大学, 外国語学部, 講師 (80608688)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 哲学 / 社会哲学 / 政治哲学 / フランス哲学 / アナキズム / 交換的正義 / 相互性 / プルードン |
研究実績の概要 |
当該年度の研究成果は、発表済みのものに関しては2点である。まず、日本倫理学会『倫理学年報』に掲載された査読論文「反神論と「別の必然性」-プルードン『経済的諸矛盾の体系』における社会変化の倫理-」、次に、科学技術振興機構・社会技術研究開発センター委託事業「高度情報社会における責任概念の策定」の公開研究会に招かれて行った口頭発表「フランス哲学・社会思想における責任概念」である。 本研究の目的は、以下の6つであった。1a)英語圏ポスト・アナキズム政治哲学の全体像の解明、1b)ポスト・アナキズム政治哲学への批判の論理解明とポスト・アナキズムの問題点の解明、2a)アリストテレスからスミスにいたる交換的正義論の系譜の整理、2b)スミスからプルードンへの影響関係の解明、以上を踏まえた3)交換的正義論の系譜と現代ポスト・アナキズム政治哲学との批判的接合作業、副次的に、4)ポスト・アナキズム重要著作の翻訳および、概説論文の執筆。 このうち、当該年度の発表済み研究成果において、2b)の主要部分について明らかにしたことになる。まず、『倫理学年報』掲載論文においては、以前の研究課題(課題番号:25870968)の成果を踏まえつつ、本研究で解明したプルードンにおける交換的正義・相互性概念に基づく社会構想について議論した。とりわけ、プルードンがスミス由来の政治経済学を全否定するのではなく、政治経済学にも社会主義にも同様に誤りがあると捉える理路について明らかにしたことは、本研究の遂行上、意義深いことであった。次に、口頭発表の方では、フランス哲学・社会思想の中で、水平的な相互性・交換的正義に基づく責任概念が提唱されたことの哲学史的意義について明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要においても示した通り、本研究の目的は、1a)英語圏ポスト・アナキズム政治哲学の全体像の解明、1b)ポスト・アナキズム政治哲学への批判の論理解明とポスト・アナキズムの問題点の解明、2a)アリストテレスからスミスにいたる交換的正義論の系譜の整理、2b)スミスからプルードンへの影響関係の解明、以上を踏まえた3)交換的正義論の系譜と現代ポスト・アナキズム政治哲学との批判的接合作業、副次的に、4)ポスト・アナキズム重要著作の翻訳および、概説論文の執筆の6つであった。 初年度にあたる当該年度においては、1a)および2b)の研究遂行に力点を置く旨、当初研究計画に記していた。まず、2b)については、上述の通り、論文および口頭発表において、成果を発表するところまで進めることができた。多くの作業量が必要となり、本研究の柱の一つである1a)については、着実に文献読解を進めており、2年度目において研究成果にあたる論文執筆が行える見通しが立つところまで進めた。そのほかに、2a)について、3本の論文を執筆する予定であるが、そのうちの1本目にあたるアリストテレスにおける交換的正義概念について、すでにテクストおよび参考文献の読解を終え、2年度目の前半に論文執筆が行える段階まで進めたうえ、2本目にあたる盛期スコラにおける交換的正義概念についての研究も一定程度進めることができた。 当初の予定では、1a)についても、初年度に成果の一部を発表したいと考えていたが、それは叶わなかった。しかしながら、すでに、論文執筆が見込まれていること、2年度目以降に集中的に行う予定だった2a)の研究を初年度から進めることができたこと、これらを理由として、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
上述の通り、今までのところ、おおむね予定した通りに研究を遂行することができているので、当初研究計画に関して大幅な再考をする必要性はないものと考えられる。したがって、今後も、研究計画にしたがうかたちで着実に研究を進めたい。 2年度目においては、まず、1a)「英語圏ポスト・アナキズム政治哲学の全体像の解明」についての論文を執筆することが最重要である。これは、夏季締切の学術誌に投稿予定で準備を進めている。ついで、2a)「アリストテレスからスミスにいたる交換的正義論の系譜の整理」に関しても、成果の3分の1を年度前半において研究成果を執筆する予定である。現在のところ、大学紀要を予定している。残る3分の2のうち、半分については、2年度目の後半に研究を進め、論文執筆準備が整うところまで進める。「現在までの進捗状況」でも述べた通り、当初の予定よりも早く研究遂行ができている部分であるので、このような進め方が十分可能であると考える。2a)の残る部分については、ホッブズを軸に、その前後における配分的正義/交換的正義の概念布置の変化を見るというかたちで、3年度目に研究成果を得たい。 1a)および2a)2b)における研究成果が2年度目までに大部分揃うことを踏まえて、3年度目に、1b)「ポスト・アナキズム政治哲学への批判の論理解明とポスト・アナキズムの問題点の解明」の研究を遂行することでパーツが揃い、本研究の最終成果となるべき、3)交換的正義論の系譜と現代ポスト・アナキズム政治哲学との批判的接合作業についての論文を執筆する予定である。並行して、4)ポスト・アナキズム重要著作の翻訳および、概説論文の執筆についても作業を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究遂行上、次年度の国際学会(フランス)への参加(研究計画に記載)が不可欠であることから、当該年度における書籍購入を最低限のものに抑えたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額分については、上述の通り、11月に予定されている国際学会(プルードン協会、フランス)に参加することに使用し、不足分は、引き続き必要最低限の書籍のみを購入することで捻出する。
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